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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年2月23日 No.3305 21世紀政策研究所連続セミナー -「エネルギーミックス実現に向けた展望と課題」第4回を開催

21世紀政策研究所(三浦惺所長)は9日、東京・大手町の経団連会館で、連続セミナー「エネルギーミックス実現に向けた展望と課題」第4回として、「電力システム改革貫徹に向けた議論の現状と課題」を開催した。

連続セミナーは昨年8月にスタート。わが国の温室効果ガス削減目標(2030年度26%削減)に用いられている2030年のエネルギーミックスの実現に向けたエネルギー・電力の課題等をテーマとしている。今回は、曳野潔資源エネルギー庁電力・ガス事業部電力需給・流通政策室長、大橋弘東京大学大学院経済学研究科教授が講師として参加した。

■ 講演「電力システム改革の現状と課題」

まず曳野室長が、エネルギー政策の現状、電力システム改革、改革の貫徹と福島への対応について説明。電力システム改革は、(1)地域を越えた電気の融通による「安定供給の確保」(2)事業者間の競争、他業種・他地域からの参入、低コストの電気から使うこと等による「電気料金の最大限抑制」(3)イノベーションを促していくための「需要家の選択肢や事業者の事業機会の拡大」――を目的として取り組んでいると述べた。

次に、政府で昨年秋以降、電力システム改革を貫徹するために検討・議論した施策を一体的に提示した中間取りまとめについて説明。(1)さらなる競争活性化に向けた「ベースロード電源市場の創設」「競争的な送電線利用ルール(間接オークションの導入)」の市場整備(2)競争原理のみでは解決が困難な公益的課題である環境、再エネ導入、安定供給への対応についての「容量メカニズムの導入」「非化石価値取引市場の創設」の市場整備(3)もう1つの公益的課題である原子力損害賠償への備え、福島第一原子力発電所(事故炉)の廃炉、原発依存度低減・廃炉の円滑な実施に資する自由化のもとでの財務会計に関する措置――について議論の現状も含めて解説した。ベースロード電源市場については、新電力の低コスト電源へのアクセスが容易になることが最終需要家の利益となるよう、政府としても注視し運用を進めていきたいとした。

■ 講演「電力システム改革貫徹に向けた展望と課題」

続いて大橋教授が、電力システム改革が残した宿題のうち、市場整備の議論を中心に説明し、それぞれの市場についての考えを述べた。

容量メカニズムについては、固定費が大きな電源の新設・投資インセンティブを市場メカニズムのみで確保するのは経済学的にも未知の世界であり、規制的な手法を残しつつ、投資回収の予見性を確保し市場を活用するハイブリッドなシステムが安定供給の確保には望ましいとした。非化石価値取引市場については、新たな非化石電源の開発、特に非FIT電源(蓄電池エネファーム等)の活用とあわせ、非FIT電源の開発のインセンティブにつながる市場となっていくことが、再生可能エネルギー導入拡大の制度として重要であるとした。

最後に、電力システム改革による効率的な電力市場の形成は、全国的・広域的なメリットオーダー(発電コストのより安い電源から動かす)の達成によるとしたうえで、わが国では連系線(各供給エリア間を結ぶ送電線)の制約を乗り越える必要があるが、他方で、人口減少と電源の分散化という今後を見据えると、連系線増強は常に正しい方向とは限らないと指摘。効率的なネットワークの形成と費用負担のあり方が、長期的には大きな課題であると締めくくった。

■ パネルディスカッション

続くパネルディスカッションでは、竹内純子21世紀政策研究所研究副主幹がモデレータを務め、有馬純研究主幹(東京大学公共政策大学院教授)も加わり、今後、制度の設計や運用を行う際の留意点を中心に議論が行われた。

【21世紀政策研究所】

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