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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年3月9日 No.3307 トランプ政権の誕生と今後の政策運営 -みずほ総合研究所の安井欧米調査部長から/アメリカ委員会企画部会

説明する安井氏

経団連は2月15日、東京・大手町の経団連会館でアメリカ委員会企画部会(守村卓部会長)を開催し、みずほ総合研究所の安井明彦欧米調査部長から、トランプ政権支持の背景や政権の行方等について説明を聞いた。説明の概要は次のとおり。

■ トランプ政権支持の背景

トランプ大統領の支持率は歴史的な低水準にあり、支持率と不支持率が拮抗している状態だが、労働者階層からの支持は強く固い。トランプ大統領は「忘れられた人々」、すなわち労働者のための政治を行うとし、米国第一主義を貫き、再び米国は勝ち始めると主張する。こうした主義主張に加えて、「あまり読書をしない」「ウェルダンステーキが好き」などトランプ大統領自身の嗜好が労働者階層に近く、親近感を抱かれている。

■ トランプ政権への対処策

トランプ大統領は雇用第一主義のもと、ツイッターで個別企業のビジネスに介入するなど、共和党の大統領らしくない行動をも厭わない。こうした政権への対処方針としては、政権に影響を及ぼすキーパーソンの見極めが重要である。経済界からすると、ゲーリー・コーン国家経済会議委員長の動向が注目される。現時点では、コーン委員長が経済政策の要となって政策を立案しており、また議会への根回しもうまく行っているようだ。

■ 「良いトランプ」と「悪いトランプ」

トランプ政権が掲げる政策には、経済にプラスの要素(「良いトランプ」)と、マイナスの要素(「悪いトランプ」)が混在している。税制改革(大型減税)、エネルギー自給、インフラ、規制改革はプラス、通商改革(TPP撤退やNAFTA再交渉)、移民制度改革はマイナスである。移民制度改革に関し、大統領は、不法移民の本国送還等を示唆しているが、不法移民といいつつも、彼らはすでに米国の労働力に組み込まれており、移民が減少すれば米国経済に大きな打撃となる。

■ 今後の政策運営

加えて米国では、大統領権限で進められる政策と議会立法措置が必要な政策がある。政権発足当初は、TPP撤退や移民制度改革など大統領権限で進められる「悪いトランプ」が先行したかたちだが、これは必然の結果だ。税制改革など財政を伴う政策は、議会による立法措置が不可欠である。規制改革は大統領権限でも実施可能だが、既存規制の廃止や根拠法の改廃など抜本的な改革には議会が関与しなければならない。今後、政策を実現するために、大統領は議会の協力を得なければならない。議会の多数党は共和党だが、来年中間選挙が実施され、かつ大統領選と議会選の勝利政党が一致する傾向にあることを踏まえると、一義的にはトランプ大統領をもり立てねばならないだろう。

【国際経済本部】

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