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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年3月9日 No.3307 新たな職務発明制度の運用実務<第2回> -平成27年改正法の具体的な内容/阿部・井窪・片山法律事務所弁護士・弁理士 服部誠

連載第2回の今回は、平成27年改正特許法の具体的な内容を解説します。

1.改正法の特徴

図表1 平成27年改正法の特徴

職務発明制度に関する平成27年改正法の特徴は、「手続き重視と多様性(使用者帰属、相当の利益)の許容」にあるということができます。

すなわち、まず、経済産業大臣が定めた「発明を奨励するための相当の金銭そのほかの経済上の利益について定める場合に考慮すべき使用者等と従業者等との間で行われる協議の状況等に関する指針」(以下、指針)を遵守する限り、どのような制度を構築するかは、各社の裁量に委ねられます。そして、指針に即して構築された社内規程に従って運用がなされている限り、仮に発明者が金額の多寡を争って訴訟を提起しても、裁判所は原則として会社の判断を尊重することになります。

また、特許を受ける権利の帰属(使用者原始帰属とするか発明者帰属とするか)や、従業者に対する発明行為へのインセテンティブ策について、企業の自主性を尊重し、多様なあり方を許容するものとなっています。

2.平成27年改正法の内容

図表2 平成27年法下での職務発明制度

(1)特許を受ける権利を使用者の原始帰属とすることが可能

平成27年改正により、使用者は、特許を受ける権利の原始的な帰属先を企業とするか、発明者とするか、自ら選択することができるようになりました。会社の規模や特許戦略、そのほかの事情を総合的に考えて、より適切と考えられる方を選択することになります。筆者の知る限り、特許を重視しているメーカーでは、使用者原始帰属を採用することにした企業も相当数あります。

使用者原始帰属とするためには、自社の職務発明規程に、「職務発明については、その発明が完成した時に、会社が特許を受ける権利を取得する」などの定めを置くことが必要となりますが、従業者との協議や従業者の合意を得る等の手続きは法律上必要ではありません。ただ、使用者原始帰属としたことを従業員に何らかの方法で周知することが望ましいと考えられており、実際にイントラネット等で周知を図っている企業が多いと思われます。

(2)「相当の対価」から「相当の利益」へ

平成27年改正により、発明者に付与するのは「発明に対するインセンティブ」(よい発明をするための呼び水)であることが明確になるとともに、金銭以外の経済上の利益を認めるという趣旨から、従前の「相当の対価」から「相当の利益」と改められました。金銭以外の経済上の利益としては、使用者等負担による留学機会の付与、ストックオプションの付与、金銭的処遇の向上を伴う昇進または昇格、法令および就業規則所定の日数・期間を超える有給休暇の付与などが想定されています。

(3)経済産業大臣の指針(ガイドライン)

平成27年改正では、前述のとおり経済産業大臣が指針を定めることとされました。指針は、現在特許庁のホームページで公開されています。指針では、「相当の利益」を決定するための社内ルールについて、その策定や改定にあたっての従業者との「協議」、従業者に対する周知としての「開示」、個別の利益付与における従業者からの「意見聴取」というプロセスにおいて、使用者はどのようなことに気をつけるべきかが記載されています。

例えば、協議については、従業者等と一堂に会した話し合い、社内イントラネットの掲示板や電子会議を通じた話し合いにおいてどのような点に留意すべきなのか、労働組合と協議する場合に留意すべき点といった、職務発明の規程を作成したり、改正する際に必要とされる過程で想定され得るさまざまな事項について解説が加えられています。

この指針に従って社内ルールを策定し、「協議・開示・意見聴取」の手続きを踏めば、原則として、適切に従業者を処遇したとして、「相当の利益」の金額について裁判所が介入することはなくなります。そのため、今般の法改正により企業にとって予見可能性が向上したといえます。

次号では、平成27年改正法を踏まえた実務の動向について説明します。

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