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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年5月25日 No.3316 第122回シンポジウム「オープンイノベーションの収益化~エコシステムにおける戦略を考える」 -21世紀政策研究所

21世紀政策研究所(三浦惺所長)は4月19日、研究プロジェクト「イノベーションエコシステムの研究~オープンイノベーションからいかに収益を上げるか」(研究主幹=元橋一之東京大学教授)の研究成果を踏まえ、都内で第122回シンポジウム「オープンイノベーションの収益化~エコシステムにおける戦略を考える」を開催した。

■ 研究報告「イノベーションエコシステムの研究」

冒頭、元橋研究主幹が、イノベーションエコシステムを中心に、オープンイノベーションの課題等を報告した。イノベーションシステムの特徴として、日本型は相手との安定的・固定的な関係のなかで協業を行っていくかたちであるのに対し、米国型は市場メカニズム、資本の原理で人や企業の形態も変わっていくことを挙げたうえで、パートナーとの関係を円滑にすることが、日本企業の競争力、収益化につながっていくとの考えを示した。

次に、成功事例として、三菱ケミカルホールディングス、産業総合研究所(TIA)、GE、日立製作所を挙げ、エコシステムにおけるキーストーンのような役割を果たす際には、(1)顧客のニーズ、社会の変化にフレキシブルに対応する(2)垂直的技術コーディネーターになる――という2つの方向があると示唆した。

また、オープンイノベーションのための社内の人材不足も大きな課題となっており、エコシステムを実現するには、1つの企業の中ではなく、多様な人がかかわる社会人教育の場が必要だと指摘した。

■ パネルディスカッション

パネルディスカッションでは、元橋研究主幹をモデレーターに、コマツ取締役の高村藤寿氏、東日本旅客鉄道執行役員総合企画本部技術企画部長・JR東日本研究開発センター所長の横山淳氏、スクラムベンチャーズ創業者兼ゼネラルパートナーの宮田拓弥氏、同研究プロジェクトの委員である東京理科大学教授の田中芳夫氏、富士通総研経済研究所上席主任研究員の西尾好司氏の間で活発な討議が行われた。

高村氏は、コマツでは生産の現場から販売代理店、顧客まですべてがつながっていく世界をつくり上げ、ソリューションの領域で新しい価値を生み出していき、オープンイノベーションを通じて、さらなる成長を目指すと述べた。

横山氏は、顧客視点のサービスを目指し、自社のデータを提供してオープンイノベーションを推進すること、新しいアイデアをすばやく取り入れ、モビリティー革命が実現できるイノベーションエコシステムの構築を目指すことを示した。

宮田氏は、オープンイノベーションの事例として、ウェブコミュニティー、API(Application Programming Interface)、アクセラレーター、CVC(Corporate Venture Capital)、M&A、イノベーションセンターの6つのカテゴリーに分けて紹介し、それぞれ長所、短所があると指摘した。

これを受けて田中氏からは、日本でも公的研究機関を核としたオープンイノベーションが始まりつつあり、モノとコトをまとめて仕組みにすることができる人材の育成が重要であるとの見解が示された。

また、西尾氏は、ビジネスモデルの明確化やコンセプトの全社員共有の重要性のほか、コラボスペースの空間をつくることもオープンイノベーションを支える仕掛けになると述べた。

パネルディスカッション

シンポジウムの詳細は、21世紀政策研究所新書として刊行予定である。

【21世紀政策研究所】

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