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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年6月15日 No.3319 「日本の科学技術イノベーションの現状とJSTの取り組み」「Society 5.0と持続可能な開発目標(SDGs)」について聞く -未来産業・技術委員会

説明する濵口理事長

経団連は5月25日、東京・大手町の経団連会館で未来産業・技術委員会(内山田竹志委員長、小野寺正委員長)を開催し、科学技術振興機構(JST、Japan Science and Technology Agency)の濵口道成理事長、JST研究開発戦略センターの倉持隆雄センター長代理ら同機構の幹部から、「日本の科学技術イノベーションの現状とJSTの取り組み」ならびに「Society 5.0と持続可能な開発目標(SDGs)」について説明を聞き、意見交換を行った。講演の概要は次のとおり。

■ 日本の科学技術イノベーションの現状

日本や世界の科学技術イノベーションの現状をメタ解析することで、日本の科学技術イノベーションに関する国際競争力の強化に向け、日本が取るべき手を考えてきた。日本は思いのほか国際競争力が低下している。

そこには、低迷する民間企業のイノベーション創出、セクター間の人材流動性の不足、労働人口の急速な減少に起因する次世代を担うイノベーション人材不足といった弱点がある。

論文の国際シェアの分析からは、TOP10%論文数の国際シェアも低下傾向にあり、現在、主要6カ国(米国、英国、ドイツ、フランス、日本、中国)のなかで最下位であることがわかった。日本の産業競争力を支えていたエネルギー、工学分野のシェア低下も顕著である。これは数年のラグをもって、産業競争力の低下をもたらす。

国際シェア低下の原因としては、国際共著論文の減少、トップ研究者集団のアクティビティーの減衰、科学技術関係経費の伸びの低下等が考えられる。

また、論文の研究領域を分析すると、日本は伝統的な研究領域に集中していることがわかる。他方、諸外国は燃料電池、ニューラルネットワークといった新しい領域の研究を戦略的に推進しており、将来、日本がさらに厳しい状況におかれることは間違いない。

ドイツのフラウンホーファー、米国のDARPA(Defense Advanced Research Projects Agency、アメリカ国防高等研究計画局)等、諸外国の成功例に学ばなければならない。フラウンホーファーは中小企業を中心とした産業界との連携に成功している。DARPAでは米国にとって重要な領域について分野を問わず大学、研究機関、企業等を支援しており、その成果は、古くはインターネット、GPS、最近では自動運転車からアップルのSiriなどの開発につながっている。失敗を肯定する文化と、未来像から逆算する研究開発アプローチが特徴である。米国では、トランプ政権下での科学技術関係予算の減少に伴い、優秀な人材の流出が進むことも予想される。日本も注目すべきである。

■ JSTの取り組み

科学技術分野における日本の国際的地位低下から脱却するため、JSTを変革し、さらに発展させるための「濵口プラン」を策定した。特に注力しているのが、「未来社会創造事業」である。明確なターゲットを決めたうえで、社会・産業が望む新たな価値の実現のために、基礎研究への立ち返りや、事業化へのジャンプアップを柔軟に実施する「スパイラル型研究マネジメント」を行う。

■ Society 5.0とSDGs

国連において、17個のゴールと169のターゲットが、「持続可能な開発目標(SDGs)」として定められた。どういった社会を目指すかについては合意できたが、どのように達成するかは、これから皆が知恵を出し合わなければならない。SDGsは、Society 5.0に明確な目標とフレームワークを与えるものであり、JSTとしても具体的なアクションを考えていく。

【産業技術本部】

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