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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年6月22日 No.3320 21世紀政策研究所主催セミナー「韓国新政権と今後の日韓関係」を開催

21世紀政策研究所は5月19日、セミナー「韓国新政権と今後の日韓関係」を開催した。

5月の韓国大統領選挙によって、文在寅政権が発足したことを受け、韓国新政権の経済政策と外交政策に注目が集まっている。そこで同研究所韓国プロジェクトの深川由起子研究主幹(早稲田大学教授)を座長として、張達重ソウル大学名誉教授、添谷芳秀慶應義塾大学教授の参加を得て、韓国新政権の特徴と今後の日韓関係について検討した。

■ 文在寅政権の誕生と韓日関係の展望

冒頭、張名誉教授から、韓国では「道徳的に正義を実現しなければならない」という過激な道徳主義が強くみられると指摘があった。そのうえで、過激な道徳主義が韓国政治を変える原動力となっているにもかかわらず、これに拮抗する保守勢力の牽制が強いと分析。このような「保守対革新の牽制と均衡」が四半世紀続いているとし、大統領の「帝王的政治」と、それに対抗する市民団体などの「ストリート政治」という韓国政治の構図を示した。

また、新政権に対する懸念として、積弊(長年積み重なった弊害)の清算と経済民主化を通じた財閥改革の過程で、国内の軋轢が深刻化する可能性を示唆した。

日韓関係については、慰安婦問題だけでなく、北東アジアの平和政策などさまざまな協力アジェンダがあるとし、大きな枠組みでとらえる必要性を示した。

■ 朝鮮半島をめぐる国際関係

続いて添谷教授は、朝鮮半島を中心とする北東アジア情勢から日韓関係の重要性を分析。そのなかで、日韓両国は米中関係の変化に対処できるよう、協力態勢をつくるべきだとの考えを示し、日本は中国を含めたアジアの将来の大きな絵姿を描くべきだと指摘した。

そのうえで、新政権の外交は、進歩派の基本的な発想を政策化するうえで現実との妥協が必要であり、試行錯誤にならざるを得ないとの見解を示した。

■ 新政権の財閥、労働政策

深川研究主幹は、今回の大統領選について「1つの時代の終わり」と表現し、権威主義と経済成長の行き詰まりが反映された選挙であったと述べた。また、韓国経済の現状に触れ、輸出主導の限界や政府・財閥主導の限界など、韓国の危機構造が雇用に集中して表れていると分析した。

文大統領の経済公約に関しては、政府主導の限界を指摘。経済民主化を実現するためには、大企業と中小企業が協力する風土を企業側からつくっていくことが重要と分析。労働改革についても、雇用は企業が支えるものであるとし、政労使対話の重要性を示唆した。

■ ディスカッション

続くディスカッションでは、深川研究主幹がモデレーターを務め、韓国政治の構造と積弊清算、日韓協力について議論が行われた。

張名誉教授は、これまで既存政党の枠組みに属さない過激な道徳主義者が変化を主導しながらも、結局彼らは政党のなかへ吸収されるという歴史を繰り返してきたことに言及した。

また、新政権が直面する現実として、前政権の時代に国民のよりどころとなる権威が失墜している点を指摘。積弊清算を実現するためには、順調な経済成長で国民の不満がなくなり支持率が高まることが前提であり、反対派の粛清ではなく、内部の弊害を清算することに重点が置かれるべきであるとの見解を示した。

添谷教授は、韓国には既存の欧米主導の国際秩序に対する独特の感覚があると分析。韓国が中国中心の国際秩序に傾斜するかはわからないが、日韓協力が成立すれば北東アジアにパラダイムシフトが起こる可能性があると述べた。

21世紀政策研究所では、今後も引き続き韓国情勢の変化を調査し、セミナー等を通じて情報発信を行っていく予定である。

【21世紀政策研究所】

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