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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年7月13日 No.3323 セミナー「トランプ政権下の米国税制改革の現状と見通し~現地調査を踏まえて」を開催 -21世紀政策研究所

講演する青山研究主幹

トランプ政権は今年4月、税制改革案(税制改革基本方針)を発表した。これを受けて21世紀政策研究所(三浦惺所長)の国際租税研究会は6月6日から9日にかけて、経団連税制委員会と協力して米国税制調査団(団長=青山慶二研究主幹・早稲田大学教授)をワシントンDCに派遣した。現地では、上院財政委員会と下院歳入委員会の共和・民主両党の税務担当スタッフなど議会関係者や、財務省、経済団体、シンクタンク、法律事務所等を訪問した。(6月22日号既報

その報告会として6月27日、青山研究主幹を講師とするセミナー「トランプ政権下の米国税制改革の現状と見通し~現地調査を踏まえて」を開催した。米国の税制改革によって、日本企業の米国事業やグローバル・サプライチェーンも大きな影響を受けることから、会員企業の関心は高く、200名を超える参加があった。

■ 税制改革の構図

セミナーの冒頭、税制改革法案の発議は下院が行い、下院通過後に上院による可決が必要であることから、キャスティングボートは議会が握っているとの説明があった。そして、現在も議会で関係者に対するヒアリングが行われている一方、税制改革法案の作成を下支えする役割を有する財務省では高官の政治任用が遅れているなど、現状に関する説明があった。

■ 国境調整税、利子控除制限、テリトリアル課税

続いて、今回のトランプ政権案につながる2014年のキャンプ提案や16年の下院共和党案(“A Better Way”)にさかのぼり、それらとトランプ政権案および現行税制とを比較しながら説明があった。主要な論点のうち、訪問先で聴取した内容を踏まえた調査団の見解は次のとおり。

  1. 16年の下院共和党案にある国境調整税(輸入課税、輸出免税)については、トランプ政権案からは除かれているが、依然として議論中であり、下院共和党案どおり採用される可能性は低いものの案としては消えていない。

  2. 利子控除制限については、全面的な制限は考えにくいものの、控除額になんらかの限度額を設定することがあり得る。

  3. 一方、国際的な課税方式として、現在の全世界所得課税主義から、日本を含むより多くの国が採用している領土内所得課税主義(テリトリアル課税)へ移行することは、トランプ政権および議会関係者の間でコンセンサスが形成されていると思われる。テリトリアル課税のもとでの租税回避防止措置のあり方については、現時点では14年のキャンプ提案も参照しながら構想されている段階であり、具体的な案に絞り込まれていない模様である。

■ BEPS、改定日米租税条約

「税源浸食及び利益移転を防止するための租税条約関連措置を実施するための多数国間条約」(BEPS防止措置実施条約)と「改定日米租税条約」に関する現地での意見交換の模様についても、次のとおり説明があった。

  1. BEPS防止措置実施条約は、6月にOECD、G20加盟国など67カ国が署名したが、米国は署名していない。米国は基本的な方向性では一致しながらも、恒久的施設の範囲と帰属主義をめぐる懸念などから、二国間条約の締結というトランプ政権以前からの主張を維持していることをあらためて確認した。

  2. また13年の署名後、上院で批准がなされないままになっている改定日米租税条約について、現地で早期批准を働きかけた。

■ 今後について

税制改革は、17年末までに成案を得られるかどうかというのが現時点の見通しである。連邦法人税率の引き下げについては、現行の税率(35%)が、トランプ政権案(15%)まで引き下げられる可能性は低く、トランプ政権案より高い税率での検討がなされている。今後の税制改革の議論の進捗を注視するにあたり、税制改正による財政収支への影響に関して両院税制委員会(JCT)が発表する見積もりにも注意を払う必要がある。

21世紀政策研究所では、引き続き経団連税制委員会と協力し、米国税制改革に関する情報を収集するとともに、必要な調査や働きかけを行っていく。

【21世紀政策研究所】

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