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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年8月10日 No.3327 日EU EPA大枠合意について聞く -ヨーロッパ地域委員会

説明する鈴木大使(右)と赤石審議官

経団連は7月24日、東京・大手町の経団連会館でヨーロッパ地域委員会(佐藤義雄委員長、越智仁委員長)を開催し、7月6日に実現した日EU 経済連携協定(EPA)の大枠合意について、首席交渉官を務める外務省の鈴木庸一国際貿易・経済担当大使、経済産業省の赤石浩一大臣官房審議官(通商政策局担当)から説明を聞いた。説明の概要は次のとおり。

■ 鈴木大使

日EU EPA交渉では、日本がEUに対して鉱工業製品などの関税撤廃を求めたのに対し、EUは日本に非関税措置への対応を求めたことで、利益のバランスの比較が難しく、難航した。しかし、EUが日本とのEPAの経済的価値を評価し、関税撤廃に応じた。

その背景には、二国間主義等の保護主義的な動きや欧州におけるポピュリズム・反グローバリズムに歯止めをかけたいとの政治的な意思が働いたことがある。英国のEU離脱前に交渉を終えたいとの事情もあった。欧州においては、既存の政治や政府への不満が高まるなか、EUの経済への貢献を示す必要があった。日本としても、TPPを除いてわが国にとって最大のEPAの締結の意義は大きく、政治レベルも含め思い切った調整を行った。

TPPも21世紀型の協定であるが、日EU EPAには、前述の欧州の事情や価値観が反映されている。例えば、日本は地方公共団体の調達市場へのアクセスを改善した。また、TPPにはないコーポレートガバナンス、農業協力の章も設けられる。環境や労働基準の維持も重視されている。

残された課題として、大枠合意では棚上げした投資家と国家の紛争解決(ISDS)手続きがある。EU側としては2019年初めに発効させたいとしており、当方としても、できるだけ早期に協定のテキストを確定させたい。

■ 赤石審議官

13年に交渉を開始して以来、成長戦略の一環として、日EU EPAの実現に努力してきた。日EU EPAをグローバル・バリューチェーン構築にあたって活用してほしい。

工業製品の関税撤廃率は日EUともに100%であり、日EU間の関税の不平等を解消できた。例えば、乗用車の関税を8年目に撤廃、自動車部品については即時撤廃率が貿易額で9割以上となる。また、家族を含めEU域内の転勤が容易になる。EUの政府調達へのアクセスも改善された。

電子商取引については、ソースコード開示要求の禁止を規定する一方、データの自由な流通とサーバー設置要求の禁止は、発効後に見直すこととなった。別途、個人情報の相互の円滑な移転を可能とする枠組み整備への対話が進展し、これらの枠組みの来年早期の実現を目指す。

規制協力も重要な成果であり、日本とEUが協力して規制・基準を策定することも念頭に、日EU間の貿易、投資に関する規制にかかる情報交換等の協力推進が盛り込まれた。今後はこの枠組みも活用し、デジタル経済等の分野などで第三国市場への展開も視野にグローバルなルール形成をリードしたい。

【国際経済本部】

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