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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年10月26日 No.3336 第22回「経団連 Power Up カレッジ」 -「自利利他 公私一如」/住友化学の十倉社長が講演

経団連事業サービス(榊原定征会長)は9月20日、東京・大手町の経団連会館で第22回「経団連 Power UP カレッジ」を開催し、住友化学の十倉雅和社長から講演を聞いた。概要は次のとおり。

■ 仕事の歩み

1974年に住友化学に入社し、最初に配属された経営管理部門である査業部では、「予算権があるからといって、君が偉いわけではない。決しておごるな」と教わる。謙虚な姿勢と、自由闊達に議論を行うことの重要性を学んだ。これが仕事人生の原点となった。大阪製造所では、高い目標設定に果敢に挑戦するチャレンジングスピリットを教え込まれ、また、現場の技術者と膝詰めで議論し、事業というのは「現場」が大事だという「現場主義」を叩き込まれた。

そして40代でベルギーに駐在。ヨーロッパでは仕事・家庭・地域活動への均等な時間配分が重視されるにもかかわらず、事業の立ち上げにあたっては、皆が休日返上で協力してくれた。夢や目標を共有すれば、文化や習慣の違いを越えられることを知った。帰国後、他社との統合準備の実務部隊の責任者となり、自社の特性を客観視できた。その後は、情報電子化学部門長として、技術革新に対応する「スピード」、顧客とのすり合わせを綿密に行う「マーケットイン」、各国の拠点で統合した経営を行う「グローバルマネジメント」の大切さを学んだ。

■ 化学の魅力

化学産業は、「化学」という学問の名前がついた産業で、無から有を創造する夢のある産業である。人々の日々の暮らしを豊かにすることから、世界中に山積する社会課題の解決に至るまで、幅広い分野で新たなソリューションを提供している。

当社は、技術優位性のある (1)ICT (2)環境・エネルギー (3)ライフサイエンス――の3分野に経営資源を重点配分している。

ICT分野では、スマートフォンなどのディスプレイの性能向上に寄与する高機能部材により、人々の快適な暮らしの実現に貢献している。

環境・エネルギー分野では、電気自動車等に使われるリチウムイオン二次電池用セパレータが一例。電池の暴走反応を防ぎ、高度な安全性を確保する部材であり、エコカーの発展を下支えする。

ライフサイエンス分野では、農作物の収穫量を増やす技術開発が挙げられる。農作物の収率は、害虫、菌、雑草などの「生物的ストレス」以上に、高温、乾燥、強風などの「環境ストレス」に左右される。当社は、農作物の生物的ストレスを減少させる農薬などとともに、環境ストレスを和らげるための「クロップストレスマネジメント」と呼ばれる技術開発に取り組んでいる。2050年には世界人口が約100億人になると予想され、深刻な食糧不足が懸念されるなか、農作物の収穫量増加に寄与することで、食糧問題の解決に貢献していく。

■ 求められる事業精神と若手社員へのメッセージ

住友の事業精神は、信用を重んじ、目先の利益だけを考えないというもの。また「自利利他 公私一如」という言葉に表されるように、事業は自身を利するとともに、国家を利し、かつ社会を利するものでなければならないとされている。この社会全体の利益を考える精神は、現在のCSR(企業の社会的責任)やCSV(共通価値の創造)の考え方に通じる。先行き不透明な時代であるが、このような精神に基づき、「変えるモノ」と「変えてはいけないモノ」を峻別していくことが、結果として事業環境に柔軟に対応することになり、企業の持続的成長につながる。

今後の活躍が期待される若手社員に3つのメッセージを贈りたい。

第1は、若いうちは力の出し惜しみをせず、120%の力を発揮してほしい。担当する業務で、自分だけの何かをみつけてほしい。山頂からの眺めは登った人にしか味わえない。その経験は違う分野でも必ず役に立つ。

第2は、コミュニケーション。グローバル化のなかで、企業、文化、国を越えたコミュニケーションが求められている。謙虚な姿勢と相互理解をもって、積極的にコミュニケーションを図ってほしい。

第3は、チャレンジングな企業風土を皆さんが先頭に立ってつくってほしい。そのためには自由闊達に議論できることが一番重要である。

最後に、私の好きな言葉は「義」。自分が何のために仕事をしているのか、常に自問している。欲望を満たすためではなく、自分の枠を越えて、より公的なことに貢献する姿勢が大切である。皆さんも業務を遂行するうえで、自分の軸を大切にしながら、それぞれの持ち場でますます活躍してほしい。

【経団連事業サービス】

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