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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年11月30日 No.3341 21世紀政策研究所とセミナー「需要家の視点からエネルギー問題を考える」を開催

21世紀政策研究所(三浦惺所長)と経団連の資源・エネルギー対策委員会(高橋恭平委員長、加藤泰彦委員長)は10月30日、東京・大手町の経団連会館でセミナー「需要家の視点からエネルギー問題を考える」を開催した。

■ 基調講演「エネルギー政策の現状と課題」

セミナーの前半では、資源エネルギー庁の小澤典明資源エネルギー政策統括調整官が、日本のエネルギー需給の現状と政策の方向性をテーマに基調講演を行った。概要は次のとおり。

日本のエネルギー構成の変化を振り返ると、戦後復興期は国産石炭と水力が大部分を占め、自給率は6割に上っていた。高度成長期に石炭から石油への転換が起こり自給率は15%に低下。その後、石油危機の発生を受けて天然ガスや原子力の拡大が図られてきた。しかし東日本大震災後、化石燃料依存度は9割に急上昇している。2010年度と15年度を比べると、エネルギー自給率は13%減少、エネルギーコストは10%超上昇、CO2排出量は6000億トンの増加となった。

こうしたなか、14年に改定された「エネルギー基本計画」では、3E+S、すなわち安全性を前提とした安定供給、経済効率、環境適合の同時達成を基本方針としている。各エネルギー源には強み・弱みの双方があり、単独で3E+Sを実現できるエネルギー源は存在しない。多様なエネルギー源のバランスよい組み合わせを追求していく。

現行のエネルギー基本計画は策定から3年が経過し、見直しの検討時期を迎えている。そこで政府は8月から、30年度に向けた課題の洗い出しを総合資源エネルギー調査会で、50年に向けた将来像の検討を経済産業大臣の私的諮問機関として新設した「エネルギー情勢懇談会」でそれぞれ開始した。原油価格や再生可能エネルギーコストの見通し、自動車のEV化の趨勢、各国の原子力政策等について検討している。こうした情勢を見据えつつ、状況変化に対応できる柔軟性も確保し、最適なエネルギー政策を策定したい。

再エネについては、主力電源化が期待されるものの、(1)海外では大幅な下落が進む発電コストが日本では高止まり(2)天候等で変動する発電量の調整を火力に依存(3)臨海部の大型発電所と需要地を結ぶかたちで形成されてきた送電網の再構築が必要――といった課題への対応が必要である。

原子力は、再稼働により電気料金とCO2排出を抑制できるため、原子力規制委員会の審査が順次進んでいくことが期待される。最大の課題は社会的信頼の回復であり、福島の復興、安全性向上、防災対策の強化および最終処分・中間貯蔵にかかる取り組みの着実な実施が必要である。特に最終処分については今夏「科学的特性マップ」を公表しており、一層の国民理解を醸成していくことが重要と考える。

このほか、省エネを着実に進めるとともに、化石燃料については低廉かつ安定的な調達と供給体制の強靱化を進める必要がある。

50年のエネルギーのあり方は、経産省と環境省がそれぞれ検討している温暖化対策の長期戦略と密接に関係する。今後、政府一体での検討を進めるにあたり、国のありようを含めた総合戦略を構想する必要がある。エネルギー基本計画の見直しにあたってもさまざまな意見を取り込みつつ進めたい。

◇◇◇

後半のパネルディスカッションでは、21世紀政策研究所の竹内純子研究副主幹がモデレーターを務め、日本エネルギー経済研究所の十市勉参与、気象業務支援センターの村山貢司気象予報士、新日鐵住金の小野透技術総括部上席主幹が加わり、再エネ導入促進のあり方と課題、電力自由化のなかでの原子力の活用、長期を見据えたエネルギー政策への期待等をめぐり議論を行った。

【環境エネルギー本部】

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