経団連は10月3日、東京・大手町の経団連会館で社会貢献担当者懇談会(金田晃一座長、山ノ川実夏座長)を開催した。非営利組織論、評価論を専門とする大学改革支援・学位授与機構の田中弥生特任教授から、評価に関する基本的な視座について説明を受けるとともに、企業の社会貢献活動をめぐる評価のあり方等について意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。
■ 営利セクターにおける評価の特徴
営利企業の評価の中心は利益等の財務面だが、企業文化やリーダーシップ、ガバナンスなど、財務諸表に表れない要素もある。近年では、財務面と非財務面の評価をミックスした、SRI(社会的責任投資)、ESG(環境、社会、ガバナンス)投資という手法も広がっている。
■ 非営利組織の評価の特徴
営利企業においても、社会貢献活動のように社会性が評価される活動の評価は、非営利組織の評価と共通する面もある。ただし、ドラッカーが非営利組織の評価指標について「企業の利益にあたるボトムラインがないため、経営を難しくしている」と指摘するように、普遍的な評価メカニズムは存在しない。
非営利組織の評価には3つの特徴がある。第1に目的、実施手段、成果測定方法を何にするかに関して、唯一の答えがないことによる「判断の難しさ」だ。第2に、成果を金銭価値に換算する基準、成功か失敗かを判断する基準がないことによる「解釈の多義性」だ。第3に、利害関係者ごとに評価対象の着目点が異なるという「多様なステークホルダーの視点」の存在だ。
■ 評価を賢く使いこなすポイント
これらの課題を認識しつつ、評価を賢く使いこなすポイントが3つある。第1は、評価の対象を明確にすることだ。事業を通じて取り組む社会課題(性質、範囲、規模や量)を明らかにし、事業が課題解決の達成手段として適切に設計されているかを確認することが大事だ。第2は、事業の成果を「効果」ではなく、「変化」としてとらえてみることだ。効果というと、つい上振れにとらえがちだが、社会環境などの影響で効果が出ないこともある。より客観的にとらえるには「変化」としてとらえた方がよい。
第3は、評価のために適切な測定や分析を行ううえでは、「設問」が重要ということだ。評価作業ではまず、評価を通じて何を知りたいか、結果をどう活用したいかを整理し、関心事項を絞り込む。そのうえで、評価の目的を設定する。そして評価設問をつくるが、シンプルに3つほどがよいだろう。この設問が調査項目、指標、データソースを決める指針となる。また、実際に指標を設定する際には、測定したい内容を適切にとらえているか、指標の妥当性を見極めることも大切だ。
【教育・CSR本部】