1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2017年12月14日 No.3343
  5. 21世紀政策研究所セミナー「COP23報告~米国離脱表明後のパリ協定の最新動向」を開催

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年12月14日 No.3343 21世紀政策研究所セミナー「COP23報告~米国離脱表明後のパリ協定の最新動向」を開催

有馬研究主幹

竹内研究副主幹

21世紀政策研究所(三浦惺所長)は11月27日、セミナー「COP23報告~米国離脱表明後のパリ協定の最新動向」を開催した。

昨年11月に発効した地球温暖化対策の国際枠組みであるパリ協定については、2020年実施に向けた詳細ルールの交渉・策定が進められているが、先進国と途上国との間で立場や意見の隔たりがみられるほか、米国がパリ協定からの離脱を表明するなど、先行きを楽観できないのが現状である。

そうしたなか、国連気候変動枠組条約第23回締約国会議(COP23)がドイツのボンで開催され、21世紀政策研究所の有馬純研究主幹(東京大学公共政策大学院教授)と竹内純子研究副主幹が参加し、各国政府・産業界関係者等との意見交換を行うとともに、ドイツの環境・エネルギー政策について現地調査を行った。

今回のセミナーでは、有馬研究主幹から地球温暖化対策の最近の国際動向とCOP23の結果について、竹内研究副主幹からドイツのエネルギー政策と日本への示唆についてそれぞれ報告した。報告の概要は次のとおり。

■ COP23の結果

パリ協定は厳しい交渉の結果取りまとめられた妥協の産物であり、多くの難しい論点は、「詳細ルール」等のかたちで先送りされている。パリ協定を「法律」とすれば、詳細ルール等は「政令・省令」にあたるものであり、これがなければパリ協定を実施に移すことができないし、パリ協定が有効に機能するかどうかは現在交渉中の詳細ルール等の内容いかんによる。

そうしたなか、今回のCOP23では、「先進国と途上国の差異(二分論)を維持し、CO2削減関連の負担を最小限にし、あらゆる局面で先進国からの支援を引き出したい途上国」と「共通のフレームワークのもとで途上国にもCO2削減努力を求め、途上国支援の負担を抑制したい先進国」の立場・意見の隔たりが、削減目標・行動(NDC)、進捗評価(グローバルストックテーク)といった詳細ルールの主要な争点でも埋まらず、内容面の収斂はみられなかった。

そのため、来年の4~5月開催のCOPの補助機関会合および12月開催のCOP24では難しい交渉が予想され、COP24では詳細ルール等の合意に至らない可能性も排除できない。ただし、「COP24で合意する」というタイムラインは、予想以上に早かったパリ協定発効を踏まえた前倒しのものであり、1年の合意先延ばしが2020年からのパリ協定の実施に支障となるものではない。

■ ドイツのエネルギー政策と日本への示唆

ドイツのエネルギー政策の基にある「長期エネルギー転換(Energiewende)」は、脱化石燃料、脱原子力を成し遂げて再生可能エネルギー主体の社会構造に変えるという「社会の変革」を目指すもので、エネルギー供給構造の転換にとどまらない広義の意味合いも持つものである。ドイツが昨年国連に提出した2050年に向けた長期戦略もこれがベースとなっている。Energiewendeに対する現時点の評価は、「再生可能エネルギーの大量導入に成功し、約3割の電気を賄うまで増加した」「一方、CO2削減は進んでいない。これは、EU―ETS(EU域内排出量取引)市場の価格低迷により火力発電の低炭素化(天然ガス火力への置き換え)が進まなかったため」である。また、「再生可能エネルギー導入に伴う安定供給に必要な国内送電網整備の遅れ」「再生可能エネルギー賦課金の増大による電気料金の高騰」といった課題が残る。

ただしEnergiewendeに対してはドイツの世論の約90%が支持しており、ドイツのエネルギー転換、社会変革への挑戦は今後も続くであろう。また、日本とドイツは技術開発の必要性、石炭火力や内燃機関の高効率化といった点で共通しており、ドイツからは「失敗」も含めて学ぶことは多い。

【21世紀政策研究所】

「2017年12月14日 No.3343」一覧はこちら