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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2017年12月14日 No.3343 米政権の中南米対応に懸念 -ワシントン・リポート<22>

米国事務所から1ブロック離れたLストリートにAmericas Society/Council of Americas(AS/COA)の瀟洒なワシントン・オフィスがある。Americaに〝s〟がつくと米州全体を指し、日本語では米州協会/米州評議会となる。ASは米州の交流を促進するフォーラム、COAは米州で活動する国際的企業の組織で、ともに実業家ディビット・ロックフェラー氏が50年以上前にニューヨークで創設したとされる。

ワシントンには米州開発銀行(IDB= Inter-American Development Bank)も置かれており、日本から中南米は遠く感じられるが、ワシントンからの眺めは非常に近い。

ワシントン市内のクリスマス・マーケットに各国民芸品が並ぶ

今年5月に開催されたCOAの第47回ワシントン年次総会には、ウィルバー・ロス商務長官、ジョン・マケイン上院軍事委員長、マルコ・ルビオ上院外交委員会西半球小委員長、ジョン・ヒッケンルーパー・コロラド州知事らが参加し、メキシコ、カナダとの貿易関係をはじめ、ベネズエラの人道危機、ブラジルの汚職や政治不安、コロンビアの和平実現などさまざまな問題について、米新政権の対応と民間の役割が話し合われた。

エリック・ファンズワースCOA副理事長は、11月7日にメキシコ・カンクンで開催された南米鉄鋼会議において、いまや分裂の街と化したワシントンから抜け出せたことは喜びと伝えたうえで、「米国はラテン・アメリカにとって完璧なパートナーだったとはいえないが、他国の平和と繁栄はわれわれすべての利益との考えで支援し、経済発展による平和な社会の実現とパートナーシップの強化は米国の国益と考えてきた」と述べた。

そのうえで、2001年の同時多発テロ、中国のWTO参加、さらには08年の金融危機以降、米国民の意識と米政府の姿勢は変化し、ソーシャルメディアの発達がそれを加速していると指摘した。移民が米国民の仕事を奪い、NAFTAなどの貿易協定が外国での雇用の増進につながっているといった主張は、あまりに短絡的だが選挙民の心をとらえ、TPP離脱やNAFTA再交渉の基調になっていると説明した。

その一方で、中国が膨大な経済力を背景に中南米に対する影響力も深めており、米国のNAFTA離脱が懸念されるなかでメキシコやカナダが中国との関係を深めていることや、米国が対応を苦慮するベネズエラに中国やロシアが資金提供を行っていることなども指摘している。

ワシントンDCでは、AS/COAをはじめさまざまな組織やシンクタンクなどが問題提起の声を上げている。そうした声は、直接、間接にホワイトハウスにも届いていると期待されるが、その一方で、来年の中間選挙を控え各地の現場の声がますます重要になっている。そうしたなか、トランプ大統領の今後の言動と政策運営が大いに注目されている。

(米国事務所長 山越厚志)

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