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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年1月25日 No.3347 解説「有期契約の無期転換ルール、本格スタート」<下> -企業の対応状況と具体的な対応策

労働契約法第18条の無期転換ルールが施行されてから、2018年4月1日で5年が経過する。有期労働者を雇用する企業は、同ルールを契機とした労使紛争が生じることのないよう適切に対応することが求められる。

◆ 企業の対応状況

小売や介護、運輸等の業種を中心に人手不足問題が深刻化するなか、企業は、優れた人材を確保するため、有期労働者の正社員登用や無期転換ルールへの対応を積極的に進めている。

労働政策研究・研修機構が有期労働者(フルタイム・パートタイム)を雇用している企業を対象に実施した調査(17年6月)によると、有期労働者について、「今後、何らかの形で無期契約にしていく」との方針を示した企業は、フルタイムについては62.9%、パートタイムについては58.9%といずれも半数を超えている。このうち、「適性を見ながら5年を超える前に無期契約にしていく」「雇い入れ段階から無期契約にする」との方針を示した企業は、フルタイム27.7%、パートタイム18.9%であり、無期転換ルールで定められた5年を待つことなく人材の確保・定着、モチベーションの向上を図ろうとする意図がうかがえる。

また、無期転換の方法については、「各人の有期契約当時の業務・責任、労働条件のまま、契約だけ無期へ移行させる」との方針を示した企業が最も多く、フルタイム 37.3%、パートタイム 50.6%となっている。

その他、「既存の正社員区分への転換」は、フルタイム30.8%、パートタイム14.2%、「正社員以外の無期契約区分(既存・新設の限定正社員区分)への転換」は、フルタイム12.3%、パートタイム10.2%となっている。

◆ 無期転換後の雇用管理区分と労働条件

労働契約法第18条に基づき無期転換する場合、労働条件は、就業規則等で特段の定めをしていない限り、原則、期間の定めを除き直前の有期契約の労働条件と同一となる。しかし、転換後の定年をはじめ基本的な労働条件は、あらかじめ労使で話し合って定めることが望ましい。

その際には、転換した労働者を受け入れる雇用管理区分と、それに応じた労働条件を明確にしておくことが肝要である。雇用管理区分は、いわゆる「正社員」に組み入れる場合と、既存あるいは新設の「限定正社員」に組み入れる場合が考えられる。

「正社員」あるいは既存の「限定正社員」に組み入れる場合は、中途採用を参考としつつ、人事・賃金制度上、どこに位置づけるのか検討することとなる。

新たに「限定正社員」の区分を設ける場合は、転換後の職務内容や責任の範囲等を勘案して、労働条件(賃金、勤務時間、勤務地、異動の有無、教育訓練、福利厚生、定年・定年後の再雇用等)をどのように設定するのか検討し、就業規則等で定めておくことが望ましい。

なお、有期労働者の待遇に関しては、今後、正社員との不合理な待遇差の解消に向けて、同一労働同一賃金の法制化が行われる。企業労使は、「同一労働同一賃金ガイドライン案」(16年12月)や「同一労働同一賃金に関する法整備について」(労働政策審議会・建議、17年6月)等を参考に協議し、待遇に対する納得性を高める取り組みを進めることが求められる。

無期転換後の雇用管理区分と労働条件

◆ 公的な支援制度

厚生労働省は、有期労働者を正規雇用労働者に転換させた場合や限定正社員制度を新たに設けた場合に、企業に助成金を支給する制度を設けている(助成を受けるためには所定の要件を満たす必要があり、助成人数や助成額には上限がある)。また、各都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)には、無期転換ルール専門の相談員を配しており、企業からの相談を受け付けている。

◇◇◇

無期転換ルールは、有期契約の活用を認めつつ、有期契約の適正な利用ルールを明確にするために導入されたものである。企業は、法改正の目的を認識したうえ、自社の状況に応じたかたちで無期転換ルールへの対応を進め、有期労働者や無期転換労働者など多様な人材が、雇用形態にかかわらず活躍できる環境を整備することが求められる。

【労働法制本部】

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