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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年3月15日 No.3354 ワシントンそして各州で官民協力して日米関係の底固めを図る -ワシントン・リポート<33>

佐々江駐米日本大使

ネブラスカ通り4000の広大な敷地に駐米日本大使の公邸がある。活動熱心な佐々江賢一郎大使のお陰でさまざまなレセプションにお招きいただき、ワシントンでのネットワーク形成に大変役立ってきた。3月7日のレセプションは大使のフェアウェルということで、いつもとやや雰囲気が異なった。通常できる大使の前の長蛇のラインが、この日ばかりは大使へのあいさつと記念撮影に殺到する人が続き、何度も崩れた。

佐々江大使が5年以上にわたり、日々、良好な日米関係の維持・強化に邁進してこられたことに敬意と謝意を表したい。特にトランプ政権の誕生というアメリカ人も驚き戸惑った状況のなかでのご活躍は特筆に値する。大使には、2015年11月の経団連米国事務所オープニング・レセプションで心温まる激励のお言葉をいただいた。公邸レセプションでも毎回ユーモアのなかにペーソスも感じられる味わい深いスピーチをされ、それを聞くことが皆の楽しみであったし、大いに懐かしい思い出となることだろう。

日米関係が良好だと、つい「take for granted(当たり前に感じる)」とよく指摘されるが、昨今の状況は、決して「当たり前」ではなかったことを思い知らされそうだ。それゆえに、さまざまな方々のご尽力に思いをはせ、自らも努力を怠らないことが大事だと思う。

偶然、杵渕正巳駐ナッシュビル総領事も3月中にご帰任とのことで、その前にお話をうかがう機会を得た。ナッシュビルのあるテネシー州といえば、テネシー・ワルツ、日産スマーナ工場、ベーカー大使、ハガティ大使などが思い浮かぶが、南北戦争前後からの歴史的経緯や人々の心情に関するお話は、日々、テネシー州をはじめ南部5州を駆けめぐってこられた経験に裏づけられたものだった。ハル・ノートで有名なハル国務長官の出身地であったり、広島に投下された原子爆弾の製造地であったりという事実を見つめながら、良好な日米関係の維持・強化に州の現場で奮闘してこられた総領事のお話は大変示唆に富むものだった。

あわせて、ブリヂストンの現地代表の方から、ファイアストーン買収とその後の状況、経営会議における社外取締役の役割、現地従業員とのコミュニケーションなどに関するお話もうかがえ、大変参考になった。1990年ごろ、ハーバード・ビジネス・スクール・セミナーの題材に、ブリヂストンのファイアストーン買収が入っていたことも思い出した。

技術の進歩、産業構造の転換、ビジネスモデルの進化などで、工場の縮小、撤退を余儀なくされた時に、地元との関係をどうマネージするかも、投資企業にとっては大きな課題になろう。あらためて情報、経験共有の重要性を痛感した。

ワシントンにおける取り組みと州レベルでの取り組み、大使館、総領事館の取り組みと民間の取り組みなど、さまざまな取り組みが重なりあって、良好な日米関係の底固めができると感じた。

(米国事務所長 山越厚志)

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