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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年3月29日 No.3356 トランプ政権通商政策の波紋 -ワシントン・リポート<35>

3月25日、ワーナー劇場で桜祭りのオープニング・セレモニーが開催され、杉山晋輔新駐米大使があいさつされた。歌手の矢野顕子さん、T.M.Revolutionらのパフォーマンスが花を添え、桜の開花を待つばかりとなった。

トランプ政権の通商政策が注目されている。ワシントン・ポスト紙は、「関税賦課はひどい政策」「トランプ政権の関税賦課はすべての米国人を痛める」「問題にすべきは中国ではなくロボット」といった論評を掲載し、鉄・アルミニウムの関税賦課を批判している。

そのなかで、「2002年にジョージ・ブッシュ大統領が鉄鋼製品に30%の関税をかけた時に、製鉄業の1万人の雇用が救われたが、鉄鋼利用業界の20万人の雇用が被害を受けた」「かつて18万8000人いた鉄鋼労働者は8万6000人に減っており、その背景にはロボットに象徴される技術革新がある」という点などを指摘している。ただ、トランプ大統領とメディアとの関係を考えると、大統領がこうした指摘に耳を傾けるとは考えにくい。

他方、国際通商政策を一貫して地道にフォローしている組織にGlobal Business Dialogue(GBD)がある。全米製造業者協会(NAM)の国際部長としてWTOや日米貿易問題の対応などに従事したジャッジ・モリス氏が00年に設立したもので、国際通商政策に関わる法律事務所、米内外の企業が会員として活動をサポートしている。

3月23日、GBDメンバーのSteptoe & Johnson法律事務所で会合が開かれ、キャリー・グッジ・オブライエン・カナダ大使館通商担当参事官が、TPP、NAFTAへの対応などカナダの通商政策を説明した。偶然隣り合わせになったのがファーム・ビューロー(American Farm Bureau Federation)の議会担当ディレクター。筆者とは異なる立場ながら、トランプ政権の通商政策を大いに懸念し、農業州知事の力も活かしロビイングするとの話だった。

GBDとともに通商問題を追っている組織にWashington International Trade Association(WITA)がある。1982年にワシントンの通商プロたちが設立し、法人会員130社を含め1800以上の会員を擁す。13日のWITAセミナーでは、ウェンディ・カトラー・アジアソサエティ政策研究所副所長(元USTR次席代表補)が、トランプ政権の通商政策が政策目標に合っていない可能性を指摘した。

CSIS、ブルッキングス研究所などのセミナーで通商問題が取り上げられると、「米国はTPPから離脱すべきではなかった」「TPP11が合意された今、米国が流れに遅れるのはまずい」といった議論が主流になる。つい「そうした議論がホワイトハウスに伝わらないのはなぜか」と何度か提起したが、「スタッフとの交流はある」との答えにとどまった。

最近の政権内人事をみると、「王様は裸だ」といった声は上がりにくい雰囲気を感じるが、米国経済団体はもとよりGBDやWITAなどとも連携を図りつつ、連邦議員事務所訪問(ヒル・ビジット)も活用し対応していきたい。

(米国事務所長 山越厚志)

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