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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年4月19日 No.3359 保守本流の復活はあるのか、いつになるのか -ワシントン・リポート<38>

4月14日、ワシントンDCの気温は30度に上がり、一気に夏の気候になった。桜祭りのパレードが、コンスティテューション通りを練り歩き、杉山晋輔駐米大使もオープンカーから聴衆に手を振った。同日開催された恒例のジャパニーズ・ストリート・フェスティバルは、今年から会場をペンシルベニア通りに戻し、国会議事堂を背景に、和太鼓や三味線の演奏が流れ、コスプレ姿のアメリカ人が写真を撮り合っていた。杉山大使のあいさつになぞらえれば、米国人も日本人になったつもりでお祭り気分を謳歌している雰囲気だった。

この前夜、米国事務所で日本人留学生との勉強会開催中に、トランプ政権が英仏の協力のもとシリアの化学兵器施設を攻撃したとのニュースが入り一瞬緊張が走った。今回の攻撃には英仏が協力し、当面大きな人的被害が報告されていないことから比較的落ち着いているが、テレビはニュースを繰り返し、ロシアはじめ諸外国の反応などが注目されている。

4月11日には、ポール・ライアン下院議長が11月の中間選挙に立候補せず48歳で引退すると表明し、共和党の苦悩を増幅させている。家族との時間を増やしたいとの理由を疑う声はないが、政治的な影響は図り知れない。

中間選挙での劣勢を憂慮しての判断とすれば、すでに30人近い引退表明者に加わることになり、その流れを加速しかねない。民主党圧勝となれば、大統領弾劾の可能性も想起されるなか、トランプ大統領を、そして共和党を守り抜くことは容易ではない。48歳という年齢を考えれば、まずは家族との時間を重視し、昨年の税制改革を成果に引退し、大統領選挙以降の政治状況が落ち着いた後にポスト・トランプの大統領選出馬も含めた再挑戦を図るシナリオは十分考え得る。本人が否定しているにもかかわらず、保守派の期待は高い。

共和党の苦悩が、ポスト・トランプにどう活かされるかを考えるうえで、Washington Examiner誌に掲載されたアーサー・ブルックスAEI(American Enterprise Institute)理事長の記事が興味深い。AEIは、1938年創立以来80周年を数える保守系シンクタンクで、米国の自由と民主的資本主義の原則を守り、その仕組みの改善を目指している。

ブルックス氏は、バルセロナ市交響楽団のフレンチホルン奏者から社会科学者として大学で教鞭を執り、2009年からAEIの理事長を務めている。その間、2冊のニューヨークタイムズ・ベストセラーを含む11冊の本を出版し、自由な企業活動こそが国民福祉の根源と主張している。かつて講演で、保守派が貧困問題を考え、リベラル派が企業活動の自由を考えることで互いを活かし合うべきだとも主張しており、トランプ政権下での対立激化にも懸念を示してきた。今回の記事でブルックス氏は、近く理事長を退任するものの、いかなる職務に就いても信念は変えないと述べている。偶然ながら、後任にライアン氏の就任を期待する声も出ている。

トランプ大統領の通商政策や最近の連邦議員補欠選挙などをみると、基本的理念、政策の効果や持続性よりも短期的なアピール力が重視されているようにみえる。ライアン氏やブルックス氏らの言動が、保守本流の将来的な復活につながることを期待したい。

(米国事務所長 山越厚志)

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