Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年5月17日 No.3361  デジタルエコノミー時代の政策を考える -OECD・BIAC・日本経済研究センターとセミナーを開催

経団連のOECD諮問委員会(櫻田謙悟委員長)は4月12日、OECD、BIAC(OECDに対する民間経済界の諮問機関)、日本経済研究センターと、デジタルエコノミー時代のルールづくりのあり方などに関するセミナーを都内で開催した。同会合はOECDのアンヘル・グリア事務総長が来日した機会をとらえて開かれたもので、経団連会員企業を中心に150名以上が出席した。概要は次のとおり。

■ 開会あいさつ=櫻田委員長

あいさつする櫻田委員長

企業活動はもとより生活の隅々で進展するデジタル化を、いかに経済・社会の発展に役立てていくかが問われている。経団連では産業競争力の強化のみならず、社会課題の解決をも目指す超スマート社会「Society 5.0」の実現を推進している。その際、デジタル化によって生み出されるデータを収集・分析し、資源として利活用することが重要なカギを握る。

保護主義的・市場歪曲的な措置をめぐって国際的な対立・摩擦が激化するなか、一方的措置に訴えるのではなく、国際的なルールに従って対処していくことが基本である。デジタル化など、現行のルールでは十分に対応できない問題には、新たなルールづくりが必要である。折しも来年は日本がG20サミットの議長国、経団連がB20サミットの主催団体となる。デジタルエコノミー時代のルールづくりや国際的な連携の機運が盛り上がることを期待したい。

■ 基調講演=グリア事務総長

基調講演を行うグリア事務総長

日本は、ブロードバンド整備や労働者1人当たりロボット台数、3次元画像解析などさまざまな分野について、OECD内でもトップレベルにある。また、WTOの場で電子商取引に関する有志国会合の立ち上げを主導するなど、デジタル分野における建設的な対話を推進している。

その一方で、電子商取引を通じた販売に関与する大企業の割合は、OECD平均の40%に対して28%、さらにオンライン購入比率も同61%に対して53%にとどまるなど、IoTの拡大に向けたポテンシャルは大きい。OECDが推進している分野横断的プロジェクト(“Going Digital”)によれば、デジタル化の恩恵を享受するためには、スキル向上や研究開発への投資、プロセス・イノベーションへの対応力、健全な競争環境の整備など、多面的な政策アプローチが必要となる。

日本で来年開催されるG20・B20サミットに向けて、経団連の強力なリーダーシップのもと、OECDも可能な限りの協力を惜しまない。

■ パネル討議1「デジタル化がもたらす利益の最大化を目指して」

パネル討議

各パネリストから、デジタル技術の進化やデータの利活用に関する事例紹介があった後、(1)プライバシーの保護とトレードオフの関係にあるデータの共有・利活用について、いかに社会の理解を得るべきか(2)博士号取得者が企業内で必ずしも有効に活用されない日本の現状を踏まえ、産学連携をいかに進めるべきか(3)電子商取引など日本が後れを取っている分野で伍していくために何が必要か――といった論点について活発な意見交換が行われた。

■ パネル討議2「デジタルエコノミー時代のルールづくり~貿易投資の事例」

パネル討議1の議論も踏まえ、電子商取引をめぐる歴史的経緯を振り返りながら、(1)デジタル貿易における包括的な政策アプローチの必要性(2)二国間(EPA/FTA)・多国間(G7、G20、APEC、OECD、WTO等)枠組みの有効活用(3)WTO電子商取引に関する有志国会合の展望や課題(4)データの特性に応じたルールづくりのあり方――といった点にき具体的な意見が交わされた。

【国際経済本部】