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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年5月24日 No.3362 「人口減少と社会保障」 -地域ケア政策ネットワークの山崎代表理事が講演/社会保障委員会・人口問題委員会

経団連は4月26日、東京・大手町の経団連会館で社会保障委員会(鈴木茂晴委員長、鈴木伸弥委員長、櫻田謙悟委員長)と人口問題委員会(岡本圀衞委員長、隅修三委員長)の合同会合を開催し、地域ケア政策ネットワークの山崎史郎代表理事から、「人口減少と社会保障」をテーマに講演を聞くとともに意見交換を行った。概要は次のとおり。

■ 人口減少時代に現在の社会保障制度は対応できるのか

わが国の社会保障は、家族、雇用、地域と深く関わり、相互に影響し合いながら、国民皆保険・皆年金を柱とする制度体系を実現するに至った。

しかし、1980年代以降、家族の単身化が進み、90年代後半以降は雇用における非正規化が進行するなかで、晩婚化や非婚化が生じ、出生率が低下した。その結果、わが国は世界に先駆けて急速な人口減少時代を迎えようとしている。

今後の総人口の減少過程においては、2040年にかけて高齢者の増加と年少・現役世代の急減が見込まれている。あわせて、子育てや社会的孤立をはじめ全世代にわたって複合的な課題やリスクを抱えており、これまでの個々のリスクに個別に対応し、かつ高齢者を念頭に置いた現行制度は、限界を示しつつある。

■ 「全世代型社会保障」の確立に向けた「当面の対応」

そこで、全世代が抱える課題やリスクを全世代が支える「全世代型社会保障」に転換していく必要がある。そのため、時間軸を区切って、必要な政策対応を講じていくべきである。

「当面の対応」として、人口減少に歯止めをかけるためにも、まず結婚・子育て世代への支援が重要である。20~30代前半の雇用基盤を強化するとともに、女性の両立支援や子育て後の再就職の希望を実現するための支援を充実する必要がある。その際、企業の役割は重要であり、育児休業と保育の2本建てを目指すべきである。

次に地域共生社会づくりが求められる。従来の現金給付中心の福祉から、相談支援や多様な就労・社会参加支援を行うエンパワーメントの強化へと進展していくべきだ。特に、現在の40代(団塊ジュニア世代とそれに連なる年齢層)については、65歳を迎える2040年までに老後に向けた経済基盤を形成できるよう、社会的に支援していくことが重要である。

■ 「中長期的な対応」

本格的な人口減少社会が到来することを見据え、社会保障の効率化・多様化に取り組むことが不可欠である。重要となるのは、サービス人材の問題であり、ICTの利活用等を通じたサービスの効率化、シニアの活用等を図ることが考えられる。また、社会保障と「すまい」の政策連携が重要となる。増加する空き家や空き地も活用しながら、コンパクトなまちづくりとともに、地域で効率的・効果的な医療・介護サービスの提供を目指す必要がある。

次に、負担面では「支え合い構造」を再構築する必要がある。現役世代が高齢者を支える「世代間」の支え合いのウエートを引き下げ、高齢者をはじめ「世代内」の支え合いを強化すべきである。そのため、人口減少の進行に伴い、「世代間」と「世代内」の支え合いのバランスを調整するとともに、高齢者の就労を促進していくことが求められる。

2040年を見据えて、これらの政策対応を講じていくことを通じて、「全世代型社会保障」を確立することができれば、人口減少の克服は可能だと考える。

【経済政策本部】

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