Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年5月31日 No.3363  先進技術を駆使した農業の将来像について聞く -農業活性化委員会企画部会

経団連では、農業の先端・成長産業化を目指し、農業における「Society 5.0」の実現に向けた検討を進めている。その一環として5月11日、都内で農業活性化委員会企画部会(髙橋勝俊部会長)を開催し、日本総合研究所創発戦略センターの三輪泰史シニアスペシャリストから、先進的な技術を活用した未来の農業モデルである「アグリカルチャー4.0」とその実現に向けた課題について聞くとともに意見交換を行った。
三輪氏の説明ならびに懇談の概要は次のとおり。

■ 期待が高まるスマート農業

耕作放棄地の増加と農業就業人口の減少は、日本の農業が抱える大きな課題である一方、1人当たり農地面積の増加と経営の大規模化の進展に資する側面も持つ。これは本来ビジネスチャンスだが、小規模かつ分散的という日本農業の特性もあって、これまで活かされてこなかった。

この状況を打破するブレークスルーとして、スマート農業が期待されている。スマート農業では、IoTやロボット等の先進技術の活用により労働力不足を補い、農作業の効率化・省力化・高品質化を図ることができる。とりわけ、「匠の技」―匠の農家の眼、頭脳、手を技術によって代替することができれば、農業の競争力は大きく向上する。

■ 「アグリカルチャー4.0」の実現に向けて

こうしたIoTを活用した農業従事者みながもうかる農業モデルを「アグリカルチャー4.0」と位置づけている。「IoT×農業」を活用することで、農業は魅力的な産業へと変わる。例えば、フルタイムでの農作業が難しい高齢者や子育て世帯、障がい者も農業へ容易に参画できるようになり、農業のダイバーシティ化も期待できる。オープンイノベーション化によって、ベンチャー企業や地場のものづくり企業が参入すれば、地域における新たなビジネスの創出にもつながるだろう。

そのためには、農作業データや研究成果のビッグデータ構築、自動運転やドローン、農業用ロボット等の普及に向けた迅速かつ大胆な規制緩和等が欠かせない。経済界からも推進に向け、積極的に声を上げてほしい。

<意見交換>

出席した企業から農業の将来像における農協の役割について質問があり、三輪氏は、農協には先進設備のシェアリングサービスの提供や各農家が保有するデータの集約等の新たな役割があるとして、「改革のチャンス」と強調した。

【産業政策本部】