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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年7月5日 No.3368 「就任後500日のトランプ政権の成果と課題」 -アメリカ委員会企画部会

説明するグレイグ氏(右)とバーグナー氏

経団連のアメリカ委員会企画部会(守村卓部会長)は6月12日、米国の公共政策に関するコンサルティング会社であるグローバル・ポリシー・グループのダグラス・バーグナー氏、イアン・グレイグ氏を招き、米国第一主義を掲げ独自路線を貫くトランプ政権における大統領就任500日の成果と課題について説明を受けるとともに、意見交換を行った。両氏による説明は次のとおり。

今年1月の法人税引き下げは1986年以来の大幅減税であり、ホワイトハウスは、この先1~2年はGDP成長率を押し上げる効果があるとの見方を示している。国内企業もトランプ政権における成果と評価している。しかしこの減税で財政赤字が約1兆ドル膨らむと予想され、公的債務が悪化することで、アメリカの財政規律を毀損するおそれがあるとの懸念もある。

また、通商・貿易分野については、TPP離脱、NAFTA交渉難航、通商拡大法232条や通商法301条に基づく措置など多くの混乱を招いている。長年自由貿易に反対してきたトランプ大統領は、多国間貿易協定を否定し、二国間貿易協定締結に邁進するが進捗は芳しくない。NAFTAについては、年内発効の期限に間に合わなかったと発表があったが、2019年に持ち越しとなれば、大統領は離脱を表明する可能性が高い。この場合、NAFTAの枠組みを活用する日本企業にも影響が及ぶことが予想される。

トランプ大統領は、国家安全保障を脅かすことを理由に関税を適用できる232条を利用し、各国との交渉において譲歩を引き出そうとしてきた。しかし、結局交渉が不調に終わり、6月1日以降鉄鋼とアルミニウムに対する関税賦課の対象となったカナダ、メキシコ、EUが報復関税適用を発表するなど、想定どおりに事が進んでいない。また301条に基づき、中国に対して500億ドル規模の経済制裁発動を決めたが、これに対し中国側も報復措置を検討しており、両国の関係は一触即発の状態となっている。

アメリカは追加関税の賦課に加え、米国重要産業に対する直接投資に関する制限強化を検討しており、これが実現すれば米中間貿易摩擦が深刻化するだけでなく、米国に投資を検討している日本企業にも影響が及ぶ可能性が高い。トランプ政権の通商・貿易政策が国際経済に与える影響は極めて大きく、その先行き不透明感から不安の声が後を絶たない。

現在、トランプ大統領の支持率は、共和党支持者に限れば83%にも上る。政権が抱える課題は多いが、アメリカ経済は好調であり、共和党議員の多くは、11月の中間選挙の勝利を確実視している。中間選挙の結果が、トランプ政権の政策にも影響を及ぼすと考えられており、国内外からの注目度は高い。大統領再選を目指し動き始めたトランプ大統領だが、残り2年余りの任期中に、中東問題、北朝鮮問題や通商政策に関して、どのような成功を収めるかによって結果は変わってくると予想される。

【国際経済本部】

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