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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年7月26日 No.3371 マイナンバー制度の情報連携について聞く -行政改革推進委員会企画部会

経団連は6月29日、都内で行政改革推進委員会企画部会(大久保秀之部会長)を開催し、京都大学の安岡孝一教授から、「情報提供ネットワークの現状と課題」について説明を聞いた。概要は次のとおり。

■ システムの概要

「情報提供ネットワークシステム」(NWS)は、個人番号(マイナンバー)を含む個人情報である「特定個人情報」漏洩を防ぎ、行政機関同士で安全に通信できるよう、総務大臣がLGWAN(注)上に設置したものである。

NWSを使用した情報連携には個人番号そのものではなく、住民票コードから生成した符号を用いる。符号は機関ごとに発行されるため、同一人物であっても各機関で異なる。例えば、行政機関Aが個人番号Xの特定個人情報を行政機関Bに対して照会する場合、(1)行政機関Aは対象人物Xに関して自らに割り当てられた符号AをもとにNWSのコアシステムに問い合わせる(2)コアシステムは機関別符号の対応表に基づき符号Aを、行政機関Bに割り当てられた符号Bに変換し、行政機関Bに対して当該情報の提供を求める(3)行政機関BはNWSのインターフェースシステムを通じて行政機関Aに当該情報を直接提供する――という流れとなる。

この仕組みに加えて、NWSで提供できる情報は番号法で限定列挙されているほか、国民はNWSを介した特定個人情報の照会・提供の記録をマイナポータルで確認することができるなど、安全性を担保する環境が整備されている。

■ システムの問題点

NWSには大きく3つの問題点がある。

1つ目は、独立のシステムとして動いておらず、住基ネット(住民基本台帳ネットワークシステム)に依存していることである。個人番号や機関別符号は住民票コードをキーとして生成されるため、住基ネットに接続できる機関でなければNWSを利用できない。また、個人を特定する基本5情報(氏名、住所、生年月日、性別、個人番号)は住基ネットにしか流れず、個人番号を用いて住所情報が取得されてもマイナポータルの開示請求の対象とならない。

2つ目は、関係属性情報の取り扱いが困難なことである。NWSの設計時には個別の機関別符号、すなわち個人に対応する情報の照会が主に想定されたため、婚姻関係や親子関係の有無の確認といった、複数の個人の関係性を問い合わせることができない。戸籍事務にマイナンバー制度を導入するため、婚姻関係記号と親子関係記号を新設し、各機関別符号に対応する記号が一致することをもって、両者の関係を把握する方向で検討が進んでいる。婚姻関係のように1対1で対応する場合には有効な解決策だが、親子関係の網羅的な把握には依然課題が残る。

3つ目はマイナポータルの変貌である。特定個人情報の開示請求のために設計したものの、その後「子育てワンストップサービス」など、本来の趣旨とは必ずしもマッチしないサービスが追加されている。設計当初の目的とは関係のない方向へと進むことで、あるべき姿が不明確になるおそれがある。

(注)LGWAN=Local Government Wide Area Network
地方公共団体を相互に接続する行政専用の閉域ネットワーク

【産業政策本部】

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