Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年8月9日 No.3373  OECD諮問委員会2018年度総会を開催

経団連のOECD諮問委員会(櫻田謙悟委員長)は7月18日、東京・大手町の経団連会館で2018年度総会を開催し、17年度事業報告および18年度事業計画等の報告を行った。また、それに先立ち、外務省経済局の林禎二参事官、経済産業省通商政策局の松尾剛彦審議官、OECD東京センターの村上由美子所長から、19年のG20大阪サミットに向けた日本政府やOECDの取り組み等について説明を聞くとともに、意見交換を行った。概要は次のとおり。

■ 説明① 外務省・林参事官

トランプ米政権発足から1年以上が経過し、G7やG20といった国際フォーラムを含め、世界経済をめぐる環境は大きく変化し、困難がある。6月上旬にカナダ・シャルルボワで開催されたG7サミットの閉幕後に、トランプ大統領がツイッターで、首脳コミュニケを受け入れないよう代表団に指示した旨ツイートしたことなどは、端的な例であろう。このようにG7ですら結束するのが困難ななか、G20での合意形成は容易ではない。

G20大阪サミットについては、今年11月末のG20ブエノスアイレス・サミット終了後、プロセスが本格的に始動する。このため、議題は現時点で未定であるが、これまでの議論の流れや政策的な重要性等に鑑みれば、質の高いインフラの推進や、公平な競争条件の確保、電子経済への課税、SDGs(持続可能な開発目標)、Society 5.0等は、しかるべく議論されることになるのではないかと考えている。

■ 説明② 経済産業省・松尾審議官

目下、米国による一方的・保護主義的措置は課題であるが、批判するだけではなく、根本的な問題に対応する必要がある。すなわち、中国の市場歪曲的な補助金や強制的な技術移転、サイバー攻撃等による知的財産等の窃取といった国家資本主義的なアプローチの結果、鉄鋼等の過剰生産問題が発生し、米国の強硬な措置を招いているという実態を認識しなければならない。

今年のG20ブエノスアイレス・サミットに向けたプロセスでは、5月に開催された貿易投資作業部会において、過剰生産問題への対応やWTO(世界貿易機関)の現代化をはじめ、根本的な問題を議論する必要性について、発展途上国を含め概ねコンセンサスを得られた。G20はもとよりさまざまな国際フォーラムを通じて、取り組んでいく必要がある。

■ 説明③ OECD東京センター・村上所長

OECDは、鉄鋼の過剰生産能力に関するグローバル・フォーラムの事務局的役割を担うとともに、16年のG7伊勢志摩サミットでも、質の高いインフラや高齢化社会、環境、デジタル等の分野における政策提言やデータ提供等の面で支援するなど、G7・G20と緊密な連携を推進している。

日本は来年のG20大阪サミットにおいて、課題先進国として、例えば高齢化社会に関するベストプラクティスを共有しつつ、デジタル化社会やAI(人工知能)といった文脈で議論を主導できるのではないか。この点、経団連が19年3月に開催するB20東京サミットのフォローアップの一環として、来年後半を目途に、OECDと経団連でセミナーを共催することも一考に値しよう。

<意見交換>

参加者から、OECDの枠組みにおいて中国等の非加盟国も含むかたちで、先進的なルールを形成していくことの可能性について質問があった。これに対し、林参事官と松尾審議官から、OECDの中立性や高い分析能力等に期待が示されるとともに、中国等にもメリットを感じさせることが重要であるとの指摘があった。一方、村上所長は、鉄鋼に関するルールづくりに向けた事実関係の取りまとめ作業の進捗状況を紹介しつつ、日本政府の支持に謝意を表明した。

【国際経済本部】