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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年8月30日 No.3374 日EU・EPAの合意内容と今後の見通し聞く -ヨーロッパ地域委員会

7月17日、東京において日EU 経済連携協定(EPA)の署名式が行われた。これを受け、経団連のヨーロッパ地域委員会(佐藤義雄委員長、越智仁委員長)は7月30日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、外務省の山上信吾経済局長、経済産業省の松尾剛彦大臣官房審議官(通商政策局担当)から、日EU・EPAの合意内容および発効に向けた今後の見通しについて説明を聞いた。概要は次のとおり。

■ 外務省・山上経済局長説明

約5年にわたる厳しい交渉の結果、日EU・EPAが今般、署名に至った。背景には、各国の保護主義的政策、市場歪曲的措置と、WTOにおける通商交渉が停滞するなか、保護主義に対抗するとともに、国際通商ルールの確立に向けてリーダーシップを発揮する必要性を、日EUの首脳が強く認識していたことが挙げられる。

日EU・EPAは、日本にとって関税面で極めて大きな経済効果がある。日本側輸出額の7割弱が有税品目である一方、日本側有税品目はEUからの輸入額の3割弱という不均衡を解消できた。農林水産品に関する交渉が最後まで難航したが、必要な国内措置を講じることにより合意に至ったことに安堵している。他方、投資保護の規律と投資紛争解決手続については、日EU・EPAと切り離されて別途交渉している。

協定の発効には、日EU双方で批准手続が必要である。わが国国会ならびに欧州議会において、さまざまな観点で議論が行われることとなろう。批准を当然視することはできない点、留意する必要がある。来年早期に発効できるよう、引き続き経団連の支援と協力をお願いする。

■ 経済産業省・松尾 大臣官房審議官説明

合意された日EU・EPAでは、日EU双方の工業製品の関税が100%撤廃される。先にEUとEPAを発効させた韓国は、EUへの自動車輸出を大幅に拡大している。日EU・EPAが、EU市場におけるわが国の競争力の回復の契機となる。

また、各種サービスの自由化、EU加盟国における政府調達市場の追加的な開放に加え、原産地規則、投資自由化(ロイヤリティ規制の禁止等)、知的財産権保護、ビジネスパーソンの滞在要件の規制緩和等について、質の高いルールが実現した。電子商取引ではソースコード開示要求の禁止が含まれた。越境データの自由な流通に関しては、協定発効後3年以内に見直すこととした。

あわせて、署名と同時に、個人情報の保護水準が同等であることを日EUが相互に認定することで最終合意に至った。

残された問題は、EPAから切り離された投資保護の規定と投資家対国家の投資紛争解決の枠組みである。EUは、日本が求める従来の仲裁型の仕組みであるISDSではなく、ICS(常設投資裁判所制度)を提案している。この制度のもとでは、仲裁人の選定は基本的に国が行うほか、上訴審が設けられることとなる。そのままでは、日本政府としては受け入れることが難しい。双方が合意可能な制度が構築できるかが今後の課題である。

【国際経済本部】

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