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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2018年9月13日 No.3376 久保21世紀政策研究所研究主幹、グッドマンCSIS上級副所長兼政治経済部長との懇談会を開催 -ワシントン・リポート<46>

経団連米国事務所は8月29日、ワシントンDCで21世紀政策研究所米国プロジェクトの久保文明研究主幹(東京大学大学院法学政治学研究科教授)、米シンクタンクの戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International、CSIS)のマシュー・グッドマン上級副所長兼政治経済部長との懇談会を開催した。両氏から、トランプ政権の政策動向や日米関係、米国中間選挙の見通し等について説明を聞くとともに意見交換を行った。両氏の説明の概要は次のとおり。

■ 久保21世紀政策研究所研究主幹

トランプ政権をみるうえで、大統領本人と政府高官の見解の違いに留意する必要がある。大統領の政策決定の特徴として3つの「I」、すなわち(1)Impulse(その時の気分)(2)Intuition(直観)(3)Ignorance(無知)――があるが、貿易赤字と不法移民問題への執着が発想の中心にある。例えば北大西洋条約機構(NATO)について、大統領はかねて時代遅れの産物と批判し、最近ではNATO加盟国のモンテネグロに対する集団防衛義務に疑問を呈する発言をするなど、NATOを軽視するような姿勢を示している。一方、米国政府の公式な政策としてNATO支持は揺らいでいない。同様に、対中、対ロ政策に関しても、中ロ寄りの傾向がある大統領と、国家安全保障戦略や国家防衛戦略を含めて両国を警戒する政府の公式見解は乖離している。

対日政策に関しては、大統領就任前は安全保障・経済両面での懸念があったが、安倍総理との首脳会談を重ねるにつれ、日米安全保障条約第5条の尖閣諸島適用を認めるなど相対的に良好な状態にある。しかし、通商関係は不透明であり、北朝鮮問題も含めて今後の予測が困難であることから、日米安保を絡めて日米FTA締結を要求してくる可能性は排除できない。

■ グッドマンCSIS上級副所長兼政治経済部長

11月の中間選挙は、上院は共和党が過半数を維持しそうな見通しだが、下院は民主党に追い風が吹いている。最近の各種予備選は投票率が上がっており、中間選挙当日、トランプ大統領に批判的な若者の投票率が上がれば、ねじれが生じる可能性は高い。通常、大統領新任直後の中間選挙は与党が議席を減らすことが多い。実現は疑わしいものの大統領弾劾決議の動きが出る可能性もある。

NAFTA再交渉にかかる米・メキシコ間の合意内容の詳細は不明だが、自動車の原産地規則、自動車部品生産に携わる労働者の賃金上昇のほかに乳製品の問題等もあってカナダが受け入れるのは困難と予想される。また、米国議会手続きについても、現行の大統領貿易促進権限(TPA)は3カ国間の通商協定にのみ有効であることから、議会の支持が得られるのか不透明である。

大統領は対米貿易黒字国に不満を募らせ、通商拡大法232条や通商法301条に基づく関税を打ち出してきたが、それでも、これまで日本への批判の矛先は緩めてきた感がある。しかし、今後、日米FTAの締結を要求し、日本政府も9月の首脳会談で日米同盟維持や関税を回避するためにセカンドベストの成果を取りに行く可能性は否定できない。大統領を止める手立ては、金融市場の下落か支持者からの不満の2つしかない。

【米国事務所】

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