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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年1月10日 No.3391 第27回「経団連 Power Up カレッジ」 -「グローバルビジネスの潮流と経営戦略~鉄鋼業の視点とともに」/新日鐵住金の進藤社長が講演

経団連事業サービス(中西宏明会長)は12月7日、東京・大手町の経団連会館で第27回「経団連 Power Up カレッジ」を開催し、新日鐵住金の進藤孝生社長が講演した。概要は次のとおり。

■ 鉄鋼業の位置づけと変遷

鉄鋼業は「ものづくり」産業を根底から支えており、また長年にわたり日本の輸出品目の中核として外貨獲得に貢献してきた。明治期に国策産業として興った日本の鉄鋼業は、戦後の高度成長期を経て1970年代に成熟期に入った後、長い合理化の時代を経験した。世界の鉄鋼業界のなかで日本は長らく覇権を握ってきたが、21世紀に入り中国が台頭するとともに、鉄鋼業のグローバル化が進展し、厳しい競争と業界再編の時代に移っている。

■ ビジネスの潮流と新日鐵住金の経営戦略

現下のビジネスの潮流を4つのメガトレンドとしてとらえて長期的な事業戦略を構築している。

第1は、「アンチグローバリズム・保護主義化」への対応である。グローバル化の副作用として拡大した各国内・各国間の所得格差への不満により、各国で自国第一主義、保護主義が高まっている。新興国では旺盛な鉄鋼需要が期待されるが、鉄鋼製品の自国産化を求める声が強い。そこで当社は、需要地で鉄源から一貫の生産体制を構築することで当該国の「インサイド・プロデューサー」となって、成長市場で確実に需要を捕捉すべく、成長戦略を深化させている。

第2は、「自動車分野の技術革新」への対応である。EV等新エネルギー車の普及によって、鉄鋼製品にさらなる軽量化や安全性が求められることが想定される。当社は有数の研究開発体制のもと、最先端プロセス・商品の開発とともに、需要家のものづくりへのソリューション提案を推進している。また、グループ内に有する鉄鋼以外の先端素材技術との融合により、鉄を基軸とした総合的な素材ソリューション提案力も強化中である。

第3は、「ICTの急速な進歩と普及」への対応である。デジタル革新を背景に、「Society 5.0」が到来する。このなかで当社は安全かつ競争力のある製造現場で安定生産・品質向上を実現するとともに、業務の効率化と価値創造を促進するための高度IT活用を進めている。

第4は、「地球温暖化問題」への対応である。炭素を還元材として利用する鉄鋼業において二酸化炭素の発生は現状不可避であるが、パリ協定への対応として日本が提出した2030年度目標に対し、日本鉄鋼業は「エコプロセス」「エコプロダクト」「エコソリューション」の3つのエコと、革新的な環境調和型製鉄プロセスの実現を通じて達成に向け努力中である。しかし、さらなる排出削減にはイノベーションが不可欠である。

■ 私の経営哲学

ラグビーの教えは経営にも通ずる。"Honor is equal."を紹介する。トライをした選手だけではなく、それを支えた選手も、皆受ける栄誉は等しいという意味である。世の中に一人でできる仕事などはなく、皆何らかの組織に属して仕事をしている。そのなかではリーダーだけでなく、表裏一体の関係としてフォロワーも必要であり、両者がそろってチームワークを形成するのである。

最後に、私にとって経営とは何か、そのエッセンスを7点伝えたい。

経営とは、(1)「環境変化への対応」(2)「短期的数字もあるが、むしろ長期的体質改善」であり、(3)「色々なステークホルダーのバランスをとること」である。また、(4)「ビジネスモデル、リーダーシップ、組織管理、そしてプレゼンテーション」(5)「使命感と問題解決の連鎖・体系・集合」(6)「終わりのない合理化・効率化の努力」なのであり、そして(7)「やはり数字」を追求すべきものである。

【経団連事業サービス】

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