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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年1月17日 No.3392 品質不正のメカニズムと対応策、多様な労働力活用について聞く -産業競争力強化委員会

経団連の産業競争力強化委員会(進藤孝生委員長、岡藤正広委員長)は12月13日、都内で経済産業省との検討会を開催した。「品質管理体制のあり方」をテーマに、同省の大内聡審議官と芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科の安岡孝司教授から説明を聞き、意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 大内審議官

わが国製造業の業績は好調だが、人手不足が顕在化している。その解決は政府の最重要課題であり、今般、改正出入国管理法により新たな外国人材の在留資格を創設する。新法では基本的に、試験を通じて所管省庁が定める業種ごとの専門性や日本語能力等の技能水準を確認する。今後、人手不足が顕著な業種別に方針を策定のうえ、関連する省令を整備していく。

品質保証体制の整備に関し、経産省は2017年12月、「製造業の品質保証体制の強化に向けて」を公表。業界団体にガイドライン策定を呼びかけた。また、Connected Industriesの推進により、不正防止に向けたデータ共有とトレーサビリティーの確保を進めている。加えて、ベストプラクティスの収集等を通じ、民間主導による自主検査の徹底を進めている。

■ 安岡教授

品質不正のメカニズム

品質不正は、横領のように個人の欲利によって起こるのではない。その背景には、経営の圧力や業績への貢献など、正当化しやすい事由が存在する。そうしたことから内部通報制度が機能しにくく、コンプライアンス教育も限界がある。また、検査部署が製造部門内にあるとコスト的存在とみなされることがある。そして検査部署の人事評価を製造部門長が行う体制下では、製造部門からの圧力で検査での不正が起きやすい。品質不正に対処するためには、ガバナンスや内部統制などのリスクマネジメント手法が重要である。

品質管理体制とディフェンスライン

品質不正を防ぐディフェンスライン(DL)は、現場レベルの検査(第1DL)、現場から独立し、収益責任を負わない検査部署による検査(第2DL)、執行部門外の監査部門による検査(第3DL)に大別される。このうち、不正防止の要となる第2DLは、多くの製造業において未整備である。第2DLのあり方としては、(1)各工場の品質管理部を切り離し、本社機能としての品質管理本部の傘下とする(2)本社機能としての品質管理本部を設置し、各事業部門の品質管理部を横断的に監視する――などの手法が有効である。検査部門は、収益以外の何をもって会社に貢献するのか、経営者が自ら考え、答えを出すことが重要である。

不正に対する投資家の視点

社外取締役や監査役については、リスクマネジメントに関する知見不足や兼職数の多さ等から、投資家は社外取締役や監査役の機能不全を問題視している。加えて、熱心な新任監査役への排除圧力が働く例や、監査役が再任され続けることによる監査視点の固定化も指摘される。

急拡大するESG投資(環境・社会・ガバナンス対応を踏まえた投資)では、特にG(Governance)が重視される。投資家は、品質不正を今後も発生する新種リスクと考えている。不正発覚後の原因究明や再発防止策が適切かを手早く見極め、投資継続か否かの判断が必要になっている。品質不正は企業価値の毀損であり、そのリスクに対応するための体制構築や管理手法の導入が急がれる。これにより、企業は信頼を回復し、競争力を強化することが可能になる。

【産業政策本部】

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