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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 週刊 経団連タイムス 2019年3月7日 No.3399 「混迷を極めるBrexit~合意なしの離脱に至るのか」 -21世紀政策研究所が欧州セミナー開催

21世紀政策研究所は2月13日、欧州情勢に関する研究プロジェクト(研究主幹=須網隆夫早稲田大学大学院法務研究科教授)メンバーによるセミナー「混迷を極めるBrexit~合意なしの離脱に至るのか」を開催した。英国のEU離脱まで期日が迫るなか、合意なき離脱に備えたEUと英国の対応を中心に各研究委員が報告した。

■ 英国が直面するBrexitの選択肢
(伊藤さゆり研究委員/ニッセイ基礎研究所主席研究員)

メイ首相の協定案の否決の原因はアイルランド国境の安全策恒久化を懸念する与党・保守党の分裂にある。英国議会の過半数は合意なき離脱を望んでいないものの、意見がまとまらない背景は世論が割れていることも影響している。離脱予定日に予想される選択肢は、(1)合意あり離脱(2)合意なき離脱(3)離脱なし――であるが、一番可能性が高いのは(3)離脱なしのオプションである「合意あり離脱」に向けた法整備のための「期限延長」だろう。

■ 合意なき離脱の原因と離脱に向けたEUと英国の対応
(中西優美子研究委員/一橋大学大学院法学研究科教授)

合意なき離脱に向かいつつある原因はアイルランド問題である。アイルランド国境に関するバックストップ(安全策)をめぐる問題の解決策がない場合、EUと英国は実質的な関税同盟にとどまることになり、これが保守党の争点となっている。EUは3つの文書を公表し、合意なき離脱に備え、市民や金融サービス、関税などの重要分野を中心に緊急対応措置の指針を示している。一方、英国は「EU離脱法律2018」によりEU法を維持する方針を示し、合意なき離脱への対応についても随時通知している。英国はEU加盟国として45年間、EU基本条約の締結や改正、多数国条約を締結してきた。これらの結びつきを離脱協定なしに一気にほどくことは不可能に近く、離脱において混乱や悪影響が予想される。

■ No-deal Brexitになった際のモノの貿易と関税
(渡邊頼純研究委員/慶應義塾大学総合政策学部教授)

合意なき離脱の場合、次の4点において注意が必要である。(1)関税(2)EUとの貿易(3)既存のFTA(4)貿易救済措置――である。例えば、英国とEUのモノの関税はWTOのMFN税率がEUと英国の双方で適用される。英国・EU間貿易は事前に「英国経済オペレーター登録認識票」(EORI)に登録する必要がある。既存FTAは何らかのアレンジメントがない場合、第三国のパートナー国とはWTOのMFNベースの貿易関係に入る。貿易救済措置は新たに設置されるTRA(英国貿易救済庁)を通じて要請することとなる。合意なき離脱については、(1)そのコストが英国内で共有されつつあること(2)EU理事会が、これまで不可能と思われた合意を土壇場で実現してきたこと(3)合意なき離脱の回避は英国、EU双方に共通の利益があること――から、回避できる可能性はあるだろう。

■ EU離脱後の英国移民政策とEU市民
(土谷岳史研究委員/高崎経済大学経済学部准教授)

英国が昨年末発表した移民白書では、技能移民の技能要件の緩和と上限の撤廃、短期の低技能移民制度の新規設立という方針が示されている。在英EU市民の新たな居住者の地位や準居住者の地位も設定されたが、これらの制度運用、登録には市民の不安や混乱がみられる。合意なき離脱の場合、在英EU市民の地位と権利の根拠が英国法となるほか、在EU英国市民についてはEU加盟各国での対応となる。さらに移行期間を見込んで設定された制度についても混乱がみられるだろう。

<パネルディスカッション>

後半のパネルディスカッションでは、須網研究主幹をモデレーターとして「Brexitは合意なしの離脱に至るのか」をテーマに、会場の質問を交えながら議論が交わされた。合意あり離脱のための期限延長については、EU側も応じるだろうとの見解で一致。そのうえで渡邊氏は、最近はEU離脱が英国、EU双方に負担がかかると認識されており、合意なし離脱は避けたいという機運がEU内で高まっていると指摘した。一方、土谷氏は、国民投票時の議論を踏まえ、英国で合理的な判断ができるか懸念を示した。合意なき離脱になった場合、中西氏は、法的な観点で緊急対応措置を取っているため、一定期間は混乱を避けられると予想。渡邊氏は関税の実行税率はまだ不明な点があり、混乱を避けるためにTSP(Transitional Simplified Procedure)の登録手続きを推奨した。土谷氏は人の移動に変化はないだろうが、出入国管理の際に英国はEUのデータベースにアクセスできない等の混乱が生じるのではないかとの見解を示した。

【21世紀政策研究所】

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