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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年5月30日 No.3409 OECD報告書「日本農業のイノベーション、生産性および持続可能性」について聞く -農業活性化委員会企画部会

経団連は5月13日、東京・大手町の経団連会館で農業活性化委員会企画部会を開催し、経済協力開発機構(OECD)貿易農業局の木村伸吾エコノミストから、OECDが11日にG20新潟農業大臣会合において公表した報告書「日本農業のイノベーション、生産性および持続可能性」について聞いた。概要は次のとおり。

農業におけるイノベーション創出、生産性・持続可能性の向上を図るべく、OECDでは、イノベーション・生産性・持続可能性に影響するさまざまな要因を分析し、長期的かつ一貫性のある政策のあり方について分析している。日本の農業は、大規模農家への構造転換、国内市場の縮小、労働力の減少・高齢化が進む一方で、海外市場の拡大が進んでいる。この潮流を高付加価値な農産物の生産ネットワークの拡大等へとつなげていくためには、3つの側面から政策を展開する必要がある。

第1点は、イノベーションや起業を喚起する政策・市場環境の構築である。日本の生産者支援は品目特定的であるうえ、技術アドバイザリーサービスも行政主体が中心である。品目を特定しない支援への転換、経営リスクに対する自己責任の強化、多様な民間主体による生産資材・サービスの供給拡大等が必要である。

2点目は、農業と農業以外の技術等とを結びつける分野横断的な政策の推進である。農業におけるイノベーションは、他分野で開発された技術への依存が進んでおり、世界的なバリューチェーンの統合も進展している。農業者の主体的なイノベーションプロセスへの参画を促すため、生産者団体が農業の研究開発に共同出資できるスキームの導入、分野横断的・国際的な共同研究等を充実させることが重要である。そうすることで、他分野・諸外国の技術・スキルの恩恵をさらに受けることも可能となろう。

3点目は、すべての農業者が農業の環境負荷の低減にコミットする政策の枠組みをつくることである。気候変動に伴う自然災害への備えを強化することは、日本農業の持続的な成長を確保するためのカギである。農業の環境への影響を体系的に評価するとともに、国および地域レベルで環境条件に適合した農業環境政策の目標を設定する必要がある。さらに、設定された環境水準の順守を直接支払いに対する受給要件とすることで、農業政策と環境政策の一貫性も確保されよう。

【産業政策本部】

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