1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2019年6月27日 No.3413
  5. トランプ政権の新たな移民制度改革案

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 週刊 経団連タイムス 2019年6月27日 No.3413 トランプ政権の新たな移民制度改革案 -ワシントン・リポート<60>

メキシコとの国境の壁建設をめぐる国家非常事態宣言の発令をはじめ、移民問題をめぐり強硬な姿勢を示し、一部では支持を集めてきた米国のトランプ大統領。5月16日、学歴や英語力の高い若者への永住権の発給を優先する新たな移民制度改革案を明らかにした。

これは、移民の家族や親族の「呼び寄せ」に関しては制限の強化をする一方で、移民希望者の技能や年齢、学歴などをポイント化して「能力ベース(メリットベース)」に基づく永住権の発給を拡大しようとするもの。ビザの申請にあたって英語の習得や試験も義務づける。トランプ大統領は発表に際し、アメリカの移民制度を「他国がうらやむもの」にしたいと述べたうえで、「呼び寄せ」による移民は低スキルで米国経済に貢献せず、米国内の雇用を奪うおそれが強いが、新たな能力ベースの移民を増やせば雇用と経済にとってプラス効果を生むと説明。現在、永住権の発給のうち能力ベースに基づく発給は12%にとどまる(親族は66%)が、これを全体の57%以上にすることを表明している。

移民申請にあたり、教育水準や英会話能力、職務経験等のポイントの加算を基礎とする方式はカナダ、オーストラリア等の多くの国で以前から採用されており、また、日本でも、高度外国人材の受け入れ促進に向け、すでにポイント制を活用した出入国管理上の優遇措置が講じられている。

トランプ大統領は就任後初めての議会演説において、ポイント制度を採用したカナダの移民制度を評価する発言をしており、今回の改革案の発表もその延長線上にあるものといえる。

もっともポイント制度はもともと自国経済の活性化に資する有能な人材の積極的な確保に主眼があるが、トランプ大統領の改革案の発表は、移民の受け入れ制限を実現するための手段としてポイント制度導入が提案されているとみることができる。

民主党は家族や親族の「呼び寄せ」を制限することには反対の意向を示している。また、移民の総数全体の削減を求める共和党内の強硬派からは、呼び寄せの削減分を能力ベースの移民で埋め合わせた場合移民の総数全体は変わらないとして、今回の改革案を批判している。

現状、下院は民主党が多数を占めており、実際に今回の改革案が議会を通過する可能性は低い。今回の改革案の発表は、来年に控える大統領選挙に向け共和党内の引き締めを図り、大統領として移民問題に取り組んでいることを中間層にアピールする意図が大きいとの指摘もある。国境の壁など不法移民対策が注目されがちであるが、この合法移民制度改革の方が米国経済界にとっては重要課題である。現行制度のビザ枠不足のため、スキルを持った外国人(特に米国の大学で研究をしている優秀な研究生)を思うように雇用できないことが米国のイノベーションを妨げていると米国ハイテク業界は主張している。今後、トランプ大統領が移民政策において議会での具体的法案化の議論に積極的に取り組むのか、あるいは単なる選挙対策レトリックに終わるのか、米国企業は注目している。

【米国事務所】

「2019年6月27日 No.3413」一覧はこちら

「週刊 経団連タイムス」一覧はこちら