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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年9月5日 No.3421 サプライチェーンのデジタル化について聞く -サプライチェーン委員会

経団連では今年度、サプライチェーン委員会(立石文雄委員長)を新たに設け、デジタルトランスフォーメーションの進展に伴い産業構造が変容するなか、産業の国際競争力強化の要となるサプライチェーン・エコシステムのあり方について検討することとしている。8月2日、第1回会合を開催し、「サプライチェーンのデジタル革新の現状・課題と大企業・中小企業の連携」をテーマに、クラウドサービス推進機構の松島桂樹理事長から説明を聞き、意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ サプライチェーンのデジタル化の現状と課題

第4次産業革命やSociety 5.0を通じ、中小企業でもIoT導入の機運が高まってきた。当面の課題は、(1)収集したデータの分析と自動化への応用(2)受発注から支払いまでの流れをいかに一気通貫にしていくか――の2点だ。

中小企業にとって、IoT導入はデジタル化の入り口である。現場のIoT化から始め、製品やサービスへの組み込みによるデータ収集、それらを分析・活用した価値創造と、企業の目的や成熟度に即して段階的に取り組む必要がある。中小企業はAIやIoT、ロボットの導入や開発にかかるコストの高さを懸念するが、本格的なものをつくる必要はなく、まずは身の丈で取り組み、データを使って何ができるかをイメージすることが重要。デジタル化により現場が見える化すれば、利益の見える化、つまり「もうかる客」と「もうからない客」がわかるようになる。これにより、中小企業は過剰な品質検査などの重複業務の見直しや、データに基づく大企業との公正な価格交渉が可能になる。

■ 共通EDIと金融EDI

インターネットが普及し、EDI(電子データ交換)が登場して以降、発注企業ごとのEDIが乱立し、受注企業が発注企業ごとに異なる取引画面での処理を強いられる「多画面問題」が発生した。その結果、受注企業にとってはファクシミリを使ったほうが効率的という状況を招いている。現在、それぞれのEDIをつなぐ新たな仕組み「共通EDI」の導入を提案している。受発注、品質管理、決済それぞれで使用するプラットフォームを共通EDIでつなぐことで、互いにデータをやり取りできる「スマートコネクト」の構築を目指す。

また、日本企業では受発注から代金支払いまでの期間が海外に比べて長い。ドイツでは、請求を銀行が肩代わりすることで入金を早める売掛債権譲渡の仕組みを使っている。今後わが国においても、大企業と中小企業だけでなく、金融機関との連携も含めた議論が必要になるだろう。また、送金電文に商流情報の添付を可能にする「金融EDI」の導入を進めることにより、受注データの収集や決済の自動化に踏み込むことができる。普及に向けて、中小企業の意識改革はもとより、ITベンダーや金融機関、そして大企業も含めオールジャパンで取り組む必要がある。

■ 大企業・中小企業の連携に向けて

中小企業にとっては事業承継、人手不足、技能伝承が深刻な課題だが、取引先がなくなって困るのは大企業や地域である。地域全体、サプライチェーン全体の課題としてデジタル化に取り組まなければわが国全体のサプライチェーン強化は進まない。具体的には金融EDIの導入による決済の自動化と大企業・中小企業の連携プラットフォーム構築を進めながら、中小企業に対しては現場改善、業務改善はもちろんAIやIoT、ロボットの実践と導入を支援する専門家を地域で育成していく方策が必要である。

【産業政策本部】

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