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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年9月12日 No.3422 リリィ・カールトン大学准教授との懇談会を開催 -カナダ委員会

説明するリリィ教授

経団連のカナダ委員会(佐藤洋二委員長、植木義晴委員長)は8月21日、東京・大手町の経団連会館でハーパー前首相(保守党)補佐官を務めた経験を持つ、メレディス・リリィ・カールトン大学准教授を招き、カナダの政治経済情勢等に関して説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 貿易の多様化を目指すカナダ

私は国際経済を専門にしており、ハーパー前政権時代には補佐官としてTPP(環太平洋パートナーシップ協定)やCETA(EU・カナダ包括的経済貿易協定)等、複数の自由貿易協定の交渉に関与した。その後、保守党から自由党に政権交代したが、世界的に保護主義的な動きが広がるなか、多国間貿易に依存するカナダは一貫して公正で開かれた自由貿易の維持・拡大を支持している。

カナダ経済は米国に大きく依存しており、輸出の75%程度が米国向けである。さらに、中国への輸出規模は米国に次ぐ第2位となっており、カナダにとって貿易の多様化は喫緊の課題となっている。カナダは米国や中国等との交渉のなかで、取引相手国との関係が常に順風満帆である保証はないことを痛感しており、より多くの国々とのビジネスを望んでいる。カナダ政府は貿易多様化戦略を掲げ、新たな国々との自由貿易協定を積極的に締結していきたいと考えている。

■ USMCA発効に向けて

USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)については、1年余りの交渉を経て昨年9月に合意にこぎ着けた。ライトハイザー米通商代表はカナダ経済の米国依存構造をよく理解しており、交渉を短期間に有利に進めた。カナダは「自動車」「乳製品」および「紛争解決制度」を重視し、特に自動車は最重要分野と位置づけ、原産地規則の現地調達率等で米国に妥協はしたものの、北米全体のサプライチェーンの維持は確保した。仮に合意に至らず、トランプ大統領が公言していたように、25%の追加関税が自動車関連製品に賦課されていれば、カナダにとって深刻な問題に発展していただろう。

USMCAの発効時期については、米国次第だと考えている。米国では、昨年の中間選挙で民主党が下院の過半数を獲得し、労働章などUSMCAの一部修正を要求している。カナダ政府は修正にオープンであるが、メキシコは前向きではないようだ。発効に向けて、米国下院との調整とメキシコの説得がカギになる。

■ 加中関係の現状

2017年12月のトルドー首相訪中以降、中国との関係がぎくしゃくするようになり、加中間のFTA予備交渉も進まなくなった。USMCAに「非市場経済国」とのFTAに関する章が設けられたが、中国を想定したものととらえられており、両国間の溝は深まるばかりだ。18年12月、ファーウェイCFOがカナダで逮捕されたことへの報復として、中国国内で2名のカナダ人が拘束され、緊迫した状況が続いている。

今年3月には、中国は、カナダからのカノーラ(菜種)の輸入を停止すると発表した。中国はカナダの最大のカノーラ輸出国であり、影響は大きい。

日本とカナダは、異なる点もあるが、自由貿易の促進による経済発展を目指す同じ志を持っており、今後も引き続き日加関係が一層強固なものになることを期待している。

【国際経済本部】

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