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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年10月17日 No.3427 景気下振れリスクに要注目 -ワシントン・リポート<66>

経団連米国事務所は9月27日、ニッセイ基礎研究所の窪谷浩主任研究員のワシントンDC訪問の機会をとらえ、米国経済の現状と今後の見通しについて説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 米国経済の動向

米国の実質GDP成長率は、2018年は前年比プラス2.9%の高成長を記録したが、19年前半は2%台半ばのペースへと低下している。内訳を見ると19年第二四半期の個人消費はプラス4.7%と好調な一方で、設備投資はマイナス0.6%のマイナス成長を記録している。個人消費が好調な背景には、10年10月から統計開始以来最長となる雇用増加を記録するなど、労働市場が良好なことが挙げられる。

一方で、米国の景況感は悪化が顕著であり、総合PMI(Purchasing Manager's Index、購買担当者景気指数)は世界全体を下回っている。また、18年以降、世界的な需要鈍化、通商政策の不透明感を理由に製造業の景況感の低下基調が持続している。来年にかけて米国の経済成長率は低下するとみられているが、どの程度の下落幅となるかが現在の注目事項である。

■ 米中貿易摩擦

昨年の7月に米国が通商法301条に基づき対中輸入額340億ドルに25%の関税を賦課し、中国もそれに対する制裁措置として同額の関税を賦課したのを皮切りに、両国において数次にわたる関税措置が実施されている。

今年9月に第4弾として実施された関税措置には液晶テレビ、衣料・靴、12月実施予定分には携帯電話、パソコン、ゲーム機などの消費財が含まれているが、これが個人消費に影響を与え、米国経済の下振れリスクを高めるおそれがある。また、これら一連の関税措置が、トランプ大統領の支持基盤である農家や製造業者に悪影響を与える可能性も存在する。

■ 米国金融政策・財政政策

米国では景気抑制的な金融政策がとられていたが、9月の政策金利引き下げに伴い、金融政策は再び小幅ながら景気刺激的なものに変わった。FRB(米連邦準備制度理事会)は物価目標2%を掲げているが、FRBが指標としているPCE(Personal Consumption Expenditures、個人消費支出)価格指数は総合、コアともに物価目標の2%を下回って推移している。

現状、債券市場、株式市場ともに追加利下げを織り込んでいる。ただし、債券市場は景気後退を見込む一方、株式市場は史上最高値圏を維持するなど、景気想定には違いがある。

通商政策に伴う実体経済の下振れリスク、インフレ下振れ、金融市場の織り込みなどから、ニッセイ基礎研究所は政策金利の年内0.25%の利下げ、20年は据え置きを予想するが、いずれにしてもトランプ大統領の今後の政策動向次第である。長期金利の見通しは19年末に1.8%、20年末に2.0%としている。

■ 20年度大統領選挙

トランプ大統領の支持率は就任以来40~45%の間で安定推移している。民主党の大統領候補者のなかではバイデン候補が独走をしているが、今年の5月ごろから優位性は後退している。

トランプ大統領が再選を勝ち取るためにはペンシルベニア、ミシガン、オハイオ、ウィスコンシン、アイオワといったかねて民主党が優位を保ってきた州での勝利が不可欠である。直近の世論調査によれば、それらの州では民主党候補の支持率がトランプ大統領を上回っているが、状況は流動的である。

■ 米国経済見通し

以上を踏まえたうえで、当研究所としての現時点(9月19日時点)での米国経済の見通しは、米中貿易戦争の年内部分合意、資本市場の安定を前提として、実質GDP成長率は19年にプラス2.3%、20年にプラス1.9%を予想する。ただし、トランプ大統領による通商政策への不透明感から景気下振れリスクが大きいと判断している。

【米国事務所】

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