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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年12月19日 No.3436 欧州ではビジネスと人権に関する義務化の方向性が鮮明に -第8回国連ビジネスと人権フォーラム報告

フォーラム初日に行われた全体会合

11月25日から27日にかけて、スイス・ジュネーブの国連欧州本部において第8回国連ビジネスと人権フォーラムが開催された。同フォーラムは、2011年の「国連ビジネスと人権に関する指導原則」の採択を受けて、国連人権高等弁務官事務所が12年から毎年開催している。今年は「企業による人権尊重の触媒としての政府の役割」をテーマに開催され、世界130カ国以上から政府、国際機関、企業・経済団体、労働組合、NGO、マスメディアなど約2500名が参加した。企業関係者は全体の31%を占め、年々増加している。日本からは、企業、外務省、JETRO、NGOなど約30名が参加。経団連は同フォーラムに参加したほか、国際使用者連盟(IOE)、国際労働機関(ILO)、持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)と個別に面談し、経団連の「人権を尊重する経営の推進と我が国の行動計画(NAP)に対する意見」11月21日号既報)について説明するとともに、ビジネスと人権の分野での協働の可能性について懇談した。

■ 国別行動計画の改定時期を迎える欧州各国

指導原則を普及させるため、各国には、指導原則を政府がどのように運用・実施していくかに関する政策文書「国別行動計画」(NAP)の策定が期待されている。現在22カ国が策定を終えており、日本も含め23カ国が策定中である。初期にNAPを策定した欧州各国は、改定・見直しの時期を迎えており、企業による自主的な取り組みだけでは不十分として、人権デューデリジェンス(人権DD)(注)に関する情報開示や人権DDの実施を義務化する動きがみられる。それを受けて、EUでは、指導原則に基づく人権DDの統一的規制に向けた検討を開始する見込みとなっている。

■ 義務化に対する産業界の反応

そうしたなか、国家が「人権保護義務」を果たしておらず企業の「人権尊重責任」にしわ寄せがきているとして、対等な競争環境を求めて人権DDの義務化に賛成する企業も一定数ある。他方、(1)義務化することで形式的な取り組みにとどまり、根本的課題への対応につながらない(2)政府の役割は「規制・義務化」で終わるのではなく、ビジネスと人権の触媒として、企業の効果的な取り組みを推進すべき(3)ハード面での「規制・義務化」に加え、規制によらないソフトな政策とのスマート・ミックスこそが重要――等の意見もあった。いずれにせよ、欧州における人権DDの規制・義務化の動きは止められないというのが大方の見通しである。

■ 企業の自主的取り組みを推進するための経団連の活動

フォーラムでは、企業にとって、人権リスクの軽減がSDGs(持続可能な開発目標)への最大の貢献であり、OECDの責任ある企業行動(RBC)の前提であるとの認識が共有されていた。経団連としては、「Society 5.0 for SDGs」実現を目指し、「企業行動憲章」に基づく人権を尊重する経営を推進する。

その一環として、日本企業の自発的、実効的な人権DDの促進を図るため、日本政府のNAP策定後(20年夏以降)にアンケートを実施し、好事例の収集と横展開のための共有を行う。また、IOE、ILO、WBCSD等と連携してビジネスと人権に関する国際的な動向を把握するとともに、グローバルサプライチェーンにおける取り組み強化に役立つ情報も含めて会員に提供していく。さらには、ビジネスと人権分野における日本企業の国際競争力の維持・向上に資するよう、経団連や日本企業の具体的取り組みを今回参加したフォーラムなどの場で発信していく。

(注)人権デューデリジェンス=企業が、取引関係を含めた事業活動において、人権への負の影響(人権リスク)を特定、防止、軽減し、どのように対処するかという継続的なプロセス

【SDGs本部】

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