経団連米国事務所は2月18日、世界銀行の川本敦シニアエコノミストから、世界経済見通し「Global Economic Prospects–January 2020」(※)について説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。
■ グローバル経済の現状
同レポートは1月8日に公表した。その後に生じた米中間の「第一段階の通商合意」、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大などの影響は織り込まれていないが、現在の経済トレンドの全体像をつかむものとして有効である。
例えば、2010年から現在までの10年間の経済指標を通して、リーマンショックからの回復過程で何が起きたかをみることができる。顕著な点として、生産性やGDPの成長率は依然として2010年の水準に届いていない一方で、政府・民間部門をあわせた債務は増加している。失業率については低位にとどまっているが、現在は政策金利がすでに低水準であり、利下げによる対応の余地が相対的に小さい。
■ 債務残高の増加
債務残高は戦後大きく分けて4つの波があり、2010年ごろから4番目の波が来ている。とりわけ、ここ10年間は民間部門の債務の増加が著しい。地域別にみると中国を含む東南アジア地域での増加が大きいが、幅広い地域で債務が増加傾向にあるのが特徴である。この背景には金利の低さが影響していると考えられるが、今後も資金を持続的に調達できるか懸念が生じる可能性がある。
■ 生産性の伸びの減速
生産性に関する長期的な傾向として、途上国の伸びが鈍化していることが注目される。生産性は、人的資本の蓄積、機械設備への投資、イノベーションのそれぞれの要素により改善が図られるが、近時はイノベーションの低下による生産性の伸び率の減少が大きい。また、途上国においては、農業から工業への転換などの産業構造の転換による一国全体の生産性向上の鈍化も懸念材料だ。
■ 政策への示唆
グローバル経済はダウンサイドにリスクが傾いてきている。途上国において、経済成長の速度が早ければ貧困率は低下していくが、その速度が遅いと改善にはつながらない。現状、途上国において成長に見合ったかたちで税収を増やすことができず、インフラや教育の改善に向けた国内資金が十分ではない問題が指摘されている。私もガーナ政府に対する技術支援に関わったが、税制や執行体制を整備し、途上国内の再配分機能を改善していく必要がある。このほか、各種の構造改革を進めていくことも重要である。
【米国事務所】