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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年3月26日 No.3448 イラン情勢をめぐり外務省の高橋中東アフリカ局長との懇談会を開催 -日本イラン経済委員会

経団連の日本イラン経済委員会(宮本洋一委員長)は3月12日、都内で会合を開催し、高橋克彦外務省中東アフリカ局長から、最近のイラン情勢について説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 米国の核合意からの離脱と中東情勢

2018年5月、米国のトランプ政権はイラン核合意から離脱した。その理由は、同合意がイランの核開発を十分制限できないことや、弾道ミサイル開発や地域不安定化活動に対する懸念に対応できていないこと等であった。その後、米国は対イラン制裁を累次にわたり強化しており、イランは米国による制裁を経済戦争であるとして反発している。イランは、核合意で得られるはずの石油・金融分野での利益が得られていないとして核合意上の義務を段階的に停止したが、IAEAとの協力は維持している。

こうした動きと並行して、昨年6月と9月のサウジアラビアの石油施設への攻撃等で、中東地域の緊張が高まった。年末年始にかけては、イラクにおいて、米軍基地への攻撃と革命ガード(イラン革命防衛隊)幹部の殺害とそれに対するイランの報復が発生し、事態がさらに悪化しかねない危機を招いた。関係者が自制し最悪の事態は回避されたものの今後対立が再燃する可能性もあり、注視していく必要がある。

■ 落ち込むイラン経済と国会議員選挙

イランは核合意による経済的果実を得られなかったばかりか、制裁によって自国産原油の輸出が激減し、また、自動車など主要産業も大きな影響を受けている。アジア企業がイランから撤退する動きもある。経済成長は期待できず、失業率も若年層を中心に高い。制裁再適用から1年以上が経過し、経済的打撃を被るなか、イランは「抵抗経済」を推進し、国内での自給自足を強化している。どれほど持ちこたえられるのかよく聞かれるが、さまざまな見方があり見通すことは困難である。

昨年11月、イラン政府は予告なくガソリンへの補助金を削減した。これを契機に、低中所得者層を中心に全土でデモが発生した。国会議員選挙前の値上げ断行は、抵抗経済を意識したものかもしれない。

そうしたなか、2月に実施された国会議員選挙において、立候補資格審査の段階でローハニ大統領の支持勢力の多くが失格となった。全体として盛り上がりに欠け、無党派層が投票を回避したこともあって投票率は過去最低を記録。その結果、保守派勢力が伸長した。5月に招集予定の国会で、当選した強硬派のガリバーフ元テヘラン市長らがローハニ大統領にどのような論戦を挑むのか、注目している。

■ イランとの二国間関係強化に向けて

日本にとってイランは友好国であり、政府としてできる限り関係を強化していく姿勢に変わりはない。今回の新型コロナウイルス対応に関しても、国際機関等を通じてイランに必要な支援を行っている。あわせて、邦人保護の観点から、イランへの渡航情報を見直した。

日本政府として、中東地域の緊張緩和や核合意の維持などの困難な問題を解決するため、外交努力を続けていきたい。その際、イランの周辺国や米国の協力が必要になってくる。今後も、日イラン間での文化交流や、環境・防災分野での技術協力などを通じた取り組みを推進していく。

【国際協力本部】

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