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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年4月9日 No.3450 トランプ対バイデンという老将対決 -ワシントン・リポート<74>

民主党予備選において、バイデン前副大統領はスーパーチューズデーの勝利に引き続き、3月10日および17日に行われた9州のうち8州でサンダース上院議員を下し、獲得選挙人数のリードを着実に伸ばしている。その結果、大統領選本選は77歳のバイデン氏と、選挙当日には74歳になっているトランプ大統領の老将対決となる公算が大きくなった。どちらが勝っても大統領選出最高齢の新記録となる。これまでの記録はトランプ現大統領が4年前に当選した時の70歳であった。驚くべきことに、トランプ氏もバイデン氏も直近3人の元大統領(オバマ、G・W・ブッシュ、クリントン)の現在の年齢よりも年上である。

トランプ氏以前の記録保持者は、1980年に69歳で初当選し、84年に73歳で再選を果たしたレーガン大統領だった。その84年の選挙では、相手のモンデール前副大統領が56歳と比較的若かったため、レーガン大統領の年齢は争点の一つとなった。特に1回目のテレビ討論会でレーガン氏が心もとない印象を与えたことにより、年齢を問題視する声が高まったが、2回目の討論会ではレーガン氏が「選挙において年齢を問題とすべきではない。私は相手の若さと経験の浅さを批判しようとは思わない」と笑いを取って攻撃をかわし、流れを変えたエピソードが有名である。

問題となるのは身体年齢だけではない。政治ニュースサイトのポリティコ創業者ジョン・ハリス氏は、トランプ、バイデン両氏を「世界観が数十年前に形成された老人で、政治感覚や関心は未来よりも過去に向いている」と指摘する。また、ペンシルベニア大学のブライアン・ローゼンワルド氏によると、高齢の候補者には長い経歴があり、その経歴を検証することが過去を振り返る政治議論に徹することになってしまうとの懸念もある。

さらに、体制派への反発が大きな原動力となっている現在の政治情勢では、「高齢候補は体制派」というマイナスイメージになることが考えられる。ただし、この場合の年齢は身体年齢ではなく、政治年齢を指す。トランプ大統領は現職であるにもかかわらず、2017年に就任した大統領職が初めての公職であり、いまだに反体制派を自任する。一方のバイデン氏は上院議員36年、副大統領8年でワシントンDC歴が計44年である。直近10回の大統領選において、ワシントンDC歴が短い方の候補が実に8回勝っている。特にDCのベテラン候補が現職の大統領に挑んだケースの成績が芳しくない。1984年にレーガン大統領に敗れたモンデール元副大統領(民主党)、96年にクリントン大統領に敗れたドール上院議員(共和党)、2004年のG・W・ブッシュ大統領に敗れたケリー上院議員(民主党)が最近の例である。

このように過去の「大統領選挙に勝った民主党候補」のタイプには合わないバイデン氏だが、もちろん過去の結果がそのまま繰り返されるとは限らない。実際、今年の大統領選が歴史的定説と異なる要素が存在するのも事実だ。

1つ目は、近年「否定型党派性(Negative Partisanship)」が強まっていることである。これは自党候補の支持よりも相手候補に対する敵意に基づいた投票行動であり、16年以降拍車がかかっている。そのような動きのなか、トランプ大統領には一部の熱烈な支持者がいる一方で、激しく嫌う敵もつくりやすいという性格が災いし、バイデン氏が広く反トランプ票を集めて勝利することは十分考えられる。

2つ目は、米国経済・社会を突然停止させた新型コロナウイルスという未曽有の危機である。この失敗が許されない事態に直面した米国民は、従来の新顔好みを捨て、政治経験豊富なベテラン政治家という、より安全な選択肢を取る可能性もある。

【米国事務所】

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