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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年5月21日 No.3453 SDGs達成における日本の課題について聞く -企業行動・SDGs委員会企画部会

経団連は4月14日、企業行動・SDGs委員会企画部会(上脇太部会長)をオンラインで開催した。コモンズ投信の渋澤健会長から、SDGs達成における日本の課題について講演を聞いた。渋澤氏は国連開発計画(UNDP)のSDGインパクトの検討に委員として参加するほか、外務省「SDGsを達成するための新たな資金を考える有識者座談会」の座長を務めている。
講演の概要は次のとおり。

■ 世界における日本のプレゼンスの現状

SDGインパクトには、(1)17目標、169ターゲットから成るSDGsの評価基準を作成してワンボイスとして取りまとめること(2)評価基準に沿った投資家や企業の取り組みにSDGインパクト・シールという認証を与えることによりSDGsへの取り組みを一層促進すること――の2つのねらいがある。UNDPが着目している分野はプライベートエクイティ(PE)ファンド、債権、企業の3つであり、昨年末にはPEファンドの評価基準の最終案、今年2月には債権に関する草案を作成している。2月の時点では、企業のSDGsへの取り組みの評価基準を夏までに起案する予定となっていた。

日本では、さまざまな組織がSDGs推進に力を入れているものの、残念ながら、UNDPというSDGsの一丁目一番地では日本のプレゼンスが弱いのが現状である。われわれが知らないところで物事が決まっていくことを避けるためにも、日本の組織が国際会議に出席して意思決定プロセスに積極的に参画し、プレゼンスを示していくことで、日本のガラパゴス化を回避していく必要がある。

■ 革新的資金調達

国連の発表によると、SDGs達成のための活動に不足している金額は、途上国だけでも年間2.5兆円といわれており、この問題を解決するために革新的資金調達が必要であり、特に民間資金の動員に期待が高まっている。

外務省の有識者座談会では、人の移動に伴う感染症リスクを踏まえた国際連帯税の導入、金融取引税に関する賛否、官民連携のブレンド・ファイナンスやインパクト・ファンドの促進、休眠預金制度の持続可能性の確保などについて報告予定である。

インパクト・ファンドの定義に関してはさまざまな議論があるが、「社会的インパクトを意図し、その持続可能性を支えるために経済的リターンも求める」と考えるべきである。インパクト・ファンド促進には、社会的インパクトを示す“共通言語”が必要である。社会的インパクトの数値化は難しいが、試行錯誤し続ける必要がある。

■ 官民連携インパクト・ファンドの組成

国内のインパクト・ファンドは3千億円規模まで成長しているが、世界的にみれば規模は小さく、そのほとんどが国内向けに投じられており、かつエクイティ投資が少ないという現状にある。

新たな資金の流れを生むためには、官民連携による可能性を模索すべきだと考え、3年前から産業革新投資機構(JIC)の若手グループと構想を重ねており、年内にはファンドを立ち上げる予定である。

社会的インパクトを意図しながら経済的リターンを得るためには、日本から世界(新興国)へ新しい良識的な金の流れと、担い手となる若い世代の人材を育成するエコシステムを構築する必要がある。

前例がなく民間企業のみでは成し得ない時には官民が連携し、官が“呼び水”のような役割を果たすことで、民間資金が投入しやすくなると期待している。

■ アフター・コロナのビジネスモデル

新型コロナウイルスの前後で「世界の常識」が分断されるなか、V字型回復を期待するのではなく新しい時代をつくっていくべきである。これまでの経済社会における成功体験であるバリューチェーンは効率性を高めるが、コロナのような世界的ショックによりチェーンが分断されると機能しなくなってしまうという欠点がある。コロナ後は、いろいろなかたちでつながり合って分断されてもカバーし合える、レジリエンスのある持続可能性が高いバリューエコシステムがビジネスモデルの主流になる可能性が高い。

【SDGs本部】

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