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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年6月25日 No.3458 韓国の現地情勢についてジェトロの三根ソウル事務所長から聞く

経団連は6月4日、日本貿易振興機構(ジェトロ)の三根伸太郎ソウル事務所長から、新型コロナウイルスへの韓国の対応と現状について説明を聞くオンライン会合を開催した。説明の概要は次のとおり。

■ 韓国の感染状況と政府の迅速な対応

韓国の感染者数は、2月の大邱(テグ)での教会関連集団感染発生後、2月29日にピーク(909人)を迎えた。その後は減少に転じたが、5月6日からの「生活防疫」(生活のなかで距離を置く)への移行後に再び首都圏の物流センターで集団感染が発生し、6月3日時点の感染者数は累計1万1590人(死者273人)、一日の感染者数は30人前後で推移するなど、完全な終息には至っていない。

韓国は、コロナ対応に成功しているといわれている。その要因は、2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)、15年のMERS(中東呼吸器症候群)の流行にうまく対応できなかった教訓を活かしているからといえる。中国・武漢での原因不明の肺炎が報じられた直後から、関係省庁・自治体の横断的な体制の整備、国内発生状況(感染経路)や防疫対策の公表など、迅速かつ徹底した対応を行っている。

具体的には、(1)検査能力の拡大と厳格な防疫管理(PCR検査、追跡調査、全数調査、14日間の自己隔離とアプリによる自己診断、防疫関連の法整備、違反者への罰金等)(2)医療体制の整備(発熱外来に相当する選別診療所、軽症者向け隔離施設の生活治療センターの設置、協力した病院への損失補塡等)(3)ドライブスルー・ウオークスルー方式の選別診療所での検査手続きや生活治療センターでの運営モデルである「K-防疫」の国際標準案としてのISO(国際標準化機構)への提出と経済協力への活用(4)韓国バイオベンチャー(00年設立)が開発した新型コロナウイルス診断キットの国内での大量供給(5月20日時点で累計生産数150万人分)と海外輸出(米国、イタリア、ブラジル等)、経済協力を行っている。

さらに、100カ国・地域からの入国禁止・制限措置に対して例外許可交渉を実施。ベトナムでプラント建設や工場運営に携わる韓国人は、入国前検査を行い、14日間隔離することで4月からベトナムでの勤務が可能となった。さらに、5月1日からは、中国との間で両国の企業関係者の迅速な例外入国を保証する「韓中ファストトラック」制度(入国前と入国後に検査を行い、訪中では1~2日隔離、訪韓では14日間の隔離を免除)を実施している。

■ 経済情勢の悪化とコロナ対応経済政策

20年第1四半期の実質GDP成長率はマイナス1.4%となり、08年の金融危機以来のマイナス幅を記録した。同年4月の失業率は4.2%(若年層9.3%)だったが、就業者数は前年同月比47万6000人減少、3月の一時休職者数は160万7000人(前年同月比126万人増)と雇用環境は悪化している。20年4月の輸出は前年同月比25.1%減の365億ドル、5月1日から20日までの輸出は前年同期比20.3%減の203億ドルと低迷している。

韓国政府は、20年の実質GDP成長率について、コロナ対応の経済対策により、20年は0.1%、21年は3.6%となり、V字回復すると予測している(6月1日発表)。そのための施策として、「韓国版ニューディール」(デジタル、グリーン)を打ち出している。具体的には、(1)22年までに31.3兆ウォンを投入し、55万人の雇用を創出(2)公共データ整備、5GとAIの融合、非対面産業の育成、社会基盤施設のデジタル化などの推進(3)「K-防疫」の高度化・グローバル化(4)被害を受けた業種の消費刺激策の実施(5)韓国企業の海外工場やR&DのUターン促進(6)グローバル企業の国内誘致――などに取り組むとしている。

【国際協力本部】

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