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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年7月23日 No.3462 「リチウムイオン電池が拓く未来社会」 -常任幹事会で吉野旭化成名誉フェローが講演

経団連は7月1日、東京・大手町の経団連会館で常任幹事会を開催し、2019年ノーベル化学賞を受賞した吉野彰旭化成名誉フェローから、「リチウムイオン電池が拓く未来社会」をテーマに講演を聴いた。概要は次のとおり。

リチウムイオン電池は「カーボン材料を負極、リチウムイオン含有金属酸化物を正極とし、電気化学的インターカレーションに基づく非水系電解液二次電池」という定義からも推し量れるように、偉大な先人による研究成果とその組み合わせによって生み出された。1981年に日本人初のノーベル化学賞を受賞した福井謙一氏による「フロンティア軌道理論(化学反応の理論的解明)」や、2000年に受賞した白川英樹氏の研究により生まれた導電性のプラスチックであるポリアセチレンは、リチウムイオン電池の開発に大きくつながっている。大学で深められた基礎研究の成果を、産業界が開発し製品化に結びつけたという点では産学連携の成功事例と位置づけられる。

19年にノーベル化学賞を受賞した理由は、モバイルIT社会の実現に大きく貢献したことと、スマート社会の実現に大きな期待が寄せられたことの2つである。とりわけスマート社会は、地球環境問題の解決に貢献するサステナブルな社会と言い換えることができ、その実現のカギは、財やサービスの提供において環境・経済性・利便性をバランスよく同時に実現することにある。

リチウムイオン電池を活用したひとつの姿として、未来のくるま社会像を紹介したい。

CASE(Connected Autonomous Shared & Services Electric)とMaaS(Mobility as a Service)によってAIEV(Artificial Intelligence Electric Vehicle=全自動運転EV)が実現する世界では、個人で車を所有せずに必要なときに最寄りのステーションから呼び寄せて利用し、車内では個人のニーズに合わせた多様なサービスを受けることも可能となる。また、このEVの充電と放電の仕組みはシンプルであり、災害時には分散型の電源としても役立つことが期待される。こうした姿は第四次産業革命の一例にすぎない。現時点では電池の耐久性などの課題もあるが、25年ごろには、AIや自動運転など他の要素技術とともに一定のレベルに到達すると見込まれている。まさにその時点からIT(Information Technology)革命から、次のET(Environment & Energy Technology)革命が始まる。25年は折しも大阪・関西万博の開催年であり、世界から日本に注目が集まる重要な節目となるだろう。

【総務本部】

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