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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年12月3日 No.3478 テレワークの法政策課題と職業安定行政の動向について聴く -雇用政策委員会

経団連は11月9日、雇用政策委員会(淡輪敏委員長、内田高史委員長)をオンラインで開催した。労働政策研究・研修機構(JILPT)の濱口桂一郎研究所長から「テレワークの法政策課題」について、また厚生労働省の田中誠二職業安定局長から「職業安定行政の主要課題と今後の方向性」をテーマにそれぞれ講演を聴いた。概要は次のとおり。

■ JILPT・濱口研究所長

(1)テレワークにかかる法政策の変遷

2004年の在宅勤務通達では、事業場外労働のみなし労働時間制の適用可否が中心であった。適用される要件は、(1)私生活を営む自宅で行われること(2)使用者の指示により常時通信可能な状態に置かれていないこと(3)随時、使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと――とされた。

18年のガイドラインでは、サテライトオフィスやモバイル勤務の活用が追加されたほか、深夜労働の制限や深夜・休日のメール送付の抑制等の対策例が盛り込まれた。当時、長時間労働の是正が基軸とされたことから、厳格な労働時間管理に傾斜した内容となった。

(2)テレワークにおける検討課題

政府は20年4月、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言を発出し、在宅勤務や時差出勤の推進を要請した。その結果、在宅勤務が急拡大する一方、労働時間管理を中心に労働法上の課題が顕在化した。コロナ禍によって多くの人々が半ば強制的に在宅勤務を経験したことで、ウェブカメラの常時設置や離席時のチャット投稿など、在宅勤務時の厳格な労働時間管理が、労働者の私的生活への介入となり得ることがわかった。

今後、「長時間労働の抑制」と「私的自由の確保」につき、どうバランスを取るかが問題になる。また、厳格な時間管理に傾斜し過ぎることなく、健康確保のために大まかな労働時間の状況把握を行うという視点からの検討も重要となろう。

■ 厚労省・田中職業安定局長

(1)職業安定行政の動向

新型コロナへの対応として、(1)雇用調整助成金の拡充等による雇用維持(2)産業雇用安定センターの活用等による失業の予防(3)ハローワークにおける相談体制の強化等による再就職支援――を柱とする各種支援を実施した。

雇用保険等の一部を改正する法律により、高年齢雇用継続給付の給付率や育児休業給付の財政区分の見直しを行い、失業保険給付にかかる保険料率等を暫定措置として2年間引き下げた。

障害者雇用では、21年3月から法定雇用率が民間企業で2.3%となるほか、高齢者の就労・社会参加の促進として、70歳までの就業機会確保が21年4月から努力義務化される。

労働者派遣制度では、見直し議論の中間整理がなされた。制度の基本的枠組みは現状を維持する一方、派遣元事業主への厳正な指導監督等、派遣事業の適正な運用が図られることとなった。

(2)中長期的な課題

今後は、多様な働き方の進展に伴うセーフティネットとしての雇用保険制度のあり方や保険財政について検討を深めるほか、労働市場の基盤整備・流動化、ハローワーク機能の強化、自治体・官民との連携等によるサービス向上が課題になると考えている。

【労働政策本部】

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