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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年1月1日 No.3481 金融行政の当面の課題と対応について氷見野金融庁長官から聴く -金融・資本市場委員会

経団連は12月4日、金融・資本市場委員会(太田純委員長、日比野隆司委員長、林田英治委員長)をオンラインで開催し、金融庁の氷見野良三長官から「金融行政の当面の課題と対応」について説明を聴くとともに意見交換を行った。概要は次のとおり。

世界金融危機の反省を活かし、規制改革を進め、金融機関も経営基盤の強化に努めていたことが、コロナ禍において金融システムの安定を維持することに寄与した、というのが規制当局としての解釈になる。これに加え、世界中での給付金・補償対応、財政政策、中央銀行の金融政策の組み合わせがあったからこそ、危機を抑え込めているといえるだろう。

国内では、先の見えない状況で、資金繰りをつなぐことが最優先である。さまざまな政策の組み合わせにより、中小事業者を含めて、資金繰り面の手当ては大きく進んだとみている。しかし、新型コロナの終息後に経済の仕組みが変化することを考えると、資金繰り対策だけでは不十分な場合も出てくる。今後は、経営改善・事業再生・事業承継といった課題に早めに取り組むことが重要である。

新型コロナ後は、負の遺産の後始末に追われる国と、新しい社会・産業構築を先導し、成長を見いだしていく国とに分かれていく可能性がある。そのなかで、ESGは新しい成長の姿という意味で一つのカギになるだろう。例えば、ESGのSであるソーシャル面では、ソーシャルボンドが国内外で注目されている。

ソーシャルボンドは、社会的課題の解決に資するプロジェクトの資金調達のために発行される債券である。金融庁として、経団連とも連携し、ソーシャルボンドの発行環境の整備に積極的に取り組みたい。

ESGのGであるガバナンス面では、現在、コーポレートガバナンス・コードの見直しを進めている。企業価値を高めるカギとして、コーポレートガバナンス改革を重視しており、多様性のある職場、取締役会の機能の実効性向上などについて議論を進めていきたい。

◇◇◇

意見交換では、日比野委員長が「企業の実質的な成長を後押しするコーポレートガバナンス・コードの改定が必要」と指摘。林田委員長は「減損の考え方など、さまざまな問題が2021年3月期決算で生じる懸念がある」と述べ、関係者の連携した対応を求めた。

このほか、「決算・監査業務のデジタル化について、生産性向上のみならず、危機管理の視点で見直しを進めてほしい」(石原秀威企業会計部会部会長代行)、「コーポレートガバナンス改革に向けた各社の工夫を制限しないよう、実態を踏まえ、コーポレートガバナンス・コードを見直していく必要がある」(佐々木啓吾建設的対話促進ワーキンググループ座長)などの指摘があった。

意見交換後、ソーシャルボンドに関する実務ガイドラインの策定に関する要望書を委員会として取りまとめた。

【経済基盤本部】

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