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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年1月14日 No.3483 連邦議会とバイデン新大統領の政権基盤 -ワシントン・リポート<79>

11月3日に行われた米国大統領選挙と連邦議会選挙は、大統領選では民主党のバイデン候補が共和党のトランプ大統領を破り、議会下院は民主党が過半数を辛くも維持し、上院では1月5日のジョージア州決選投票の結果、50対50の痛み分けとなった。上院では賛否同数の場合、副大統領が決定的な51票目を投じるため、上下院とも民主党多数にはなる。しかし、その僅差ゆえにバイデン新政権のアジェンダは制約される可能性が高い。

大統領選においては、トランプ大統領の「悪政」に全面的な否認が突き付けられるかのような主要メディアの事前報道とは異なる結果となった。トランプ支持者は、深刻化するコロナ禍においても投票所にこぞって出向き、敗れはしたものの、予想以上の僅差に持ち込んだ。1月6日の議事堂侵入事件の結果、トランプ大統領本人の求心力はベース支持者を除いて低下することになるだろうが、民主党左派の世界観に賛同できずにトランプ票を投じた有権者は、今後も無視できない政治勢力であることが示された。

上院も、大方の予想では共和党現職議員がトランプ大統領の不人気に引きずられて民主党が過半数を奪還するとみられていたが、ジョージア州決選投票の結果、辛うじて50議席獲得した(賛否同票の決定票は副大統領のため、民主党の実効支配)。民主党は過半数の支持をもって、法案可決には60票を要するフィリバスターの廃止をもくろんでいたが、一部の中道派民主党議員は廃止反対を表明しており、法案成立には一部の共和党議員の協力が引き続き必要となる。その意味では、選挙前に取り沙汰されていた最高裁判事増員やグリーン・ニューディールなどは引き続き上院共和党が阻むことになる。特にグリーン・ニューディールについては、石炭州のウェストバージニア州選出の中道派マンシン議員がエネルギー・天然資源委員長となることを考えると、見通しは厳しいといえる。

一方の下院でも、2018年の中間選挙で過半数を失った共和党がさらに5~15議席減らすとみられていたが、逆に過半数には届かないものの10議席伸ばす見込みである。その結果、民主党は過半数をわずか5議席上回る222議席となり、数名の民主党議員が造反すれば法案を阻止することができる。数名の民主党議員がバイデン政権入りすることになり、補欠選挙が実施されるまで空席が生じることも民主党指導部を悩ませ、ぎりぎりの運営となる。22年の中間選挙で共和党が下院を奪還する可能性が高まった。大統領選ではバイデン氏を選出しながらも、上院は50対50にとどまり、下院でも共和党が議席を伸ばすという結果は、一見矛盾しているようだが、「トランプはダメだが民主党にも完全には任せたくない」という有権者の意外に冷静な判断ともいえる。今回のバイデン政権に付与された政治権限(mandate)は限定的なものだといえる。

【米国事務所】

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