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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年6月24日 No.3504 鈴木駐トルコ大使と懇談 -日本トルコ経済委員会

鈴木大使

経団連の日本トルコ経済委員会(柵山正樹委員長、斎藤保委員長)は6月4日、鈴木量博駐トルコ特命全権大使とのオンライン懇談会を開催し、最近のトルコ情勢、日トルコ関係の動向等について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 経済と内政

トルコでは、2004年から17年までインフレ率が一桁台に抑えられ、海外資本を活用した公共事業推進により、17年には実質成長率が7%台に達するなど、エルドアン政権の経済政策は、つい最近まで実績を上げてきた。しかし、19年の統一地方選挙等を意識した拡張的公共投資重視政策の結果、インフレが進行し、失業率上昇や貧富の差の拡大をもたらしてしまった。

このような経済政策のミスマッチにより、与党の支持率が低下し、21年3月の世論調査では、4割を切っている。こうした状況下、エルドアン大統領の現在の最大の関心事は大統領としての再選にあると思われる。

今年3月に金融安定重視のアーバル中央銀行総裁が突如解任されたことが注目されたが、これは政権・与党内の公共投資重視派と金融安定重視派の対立を背景としたものと考えられる。選挙が近づくなかで、景気対策への要望が強まり、エルドアン大統領が前者を選んだと解釈できる。ただ、中銀総裁の解任が、トルコ中銀の独立性に対する信用性を毀損したことは否めない。

以上はトルコの政治経済をフローの側面から概観したものだが、ストックの面からみると、高い生活水準、治安の良さ、高い労働生産性、豊富な観光資源等の好条件も多く、トルコは依然有望な投資先である。

この点は、トルコ国内の7400社を超える独系、1700社の米系企業の存在、高い不動産価格上昇率などに表れているが、どうしてもフローの側面ばかりが報道されがちで、ストックとしてのトルコのすばらしい点が見落とされがちな点は残念だと思う。

■ 外交

外交政策も選挙対策の側面からみるとわかりやすい。従来のナショナリズムによる周辺国への強硬姿勢の結果、トルコは四面楚歌の状況となった観がある。

これを受け、実利主義的に対EU、ギリシャ、キプロス、エジプト、サウジアラビア等の周辺国との関係改善に方針転換し始めている。

対米関係については、大統領同士の関係は旧知の仲といわれ、NATO首脳会議でも両首脳の会談が予定されている。しかし、ロシア製ミサイルS400の導入問題は、安全保障上、米国が直ちに認めるとは考えにくく、交渉が続くだろう。

対中関係は、プラハから北京への鉄道がトルコを経由することもあり一帯一路構想を支持している。他方、中国製ワクチンが予定どおり納品されないことへの不満も高い。

■ 日本トルコ関係

日本との間では、日トルコEPA、社会保障協定や日トルコ科学技術大学設立準備などの交渉が行われている。EPA交渉では、4月から新たにメフメト・ムシュ貿易大臣が着任したので、今後を注視している。社会保障協定は対象範囲に意見の齟齬がある。

現在、24年の日トルコ外交関係樹立100周年に向け準備を始めている。トルコは文化、自然ともに豊かな国であり、多くの日本人に訪れてほしい。

【国際経済本部】

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