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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年11月11日 No.3521 大学の経営・ガバナンス改革 -教育・大学改革推進委員会企画部会

経団連は10月12日、教育・大学改革推進委員会企画部会(平松浩樹部会長)をオンラインで開催した。大学の経営・ガバナンス改革をテーマに、明治大学前学長の土屋恵一郎千葉工業大学特別教授、渡邉倫子内閣府科学技術・イノベーション推進事務局参事官(大学改革・ファンド担当)から、それぞれ説明を聴き懇談した。説明の概要は次のとおり。

■ 求められる大学改革(土屋氏)

(1)オンライン授業の推進

大学では、かねて社会人向けの教育や受験生への広報、卒業生への寄付促進のコンテンツ等として、オンライン授業の導入を進めてきたところ、コロナ禍で一気に普及した。オンライン授業は、繰り返し視聴することで習熟度を高められ、かつ海外・国内の大学との間でインタラクティブな共同授業の展開が可能となる。対面授業に戻した時にオンライン授業をなくすのではなく、対面授業とのハイブリッド化を進め、より魅力的な大学教育を実現すべきである。

(2)これからの社会を見据えた大学教育の実践

明治大学は、2008年に留学生数の拡大のために国際日本学部を創設したほか、研究大学への転換を図るために13年にデータサイエンスなどを扱う総合数理学部を創設した。文部科学省の科学研究費において、応用数学分野の先端研究では、国立大学を抑えて2年連続でトップとなった。国から私立大学への研究助成は一般に少ないが、私立大学も研究を重視して取り組んでいる。

明治大学以外にも、データサイエンス分野の学部をつくろうとした東京の私立大学があったが、18年度から施行された、いわゆる「東京都23区規制」により、東京23区に所在する私立大学の学部・学科の新設や定員増が認可されなくなった。同規制は、地方からの若年人口流出の抑制を目的とするもので、学生数に占める地方出身者の割合が小さい東京の私立大学には現状に適さない。特にデータサイエンスはこれからの社会に求められる能力であり、すべての大学生が身につけるべきである。

また、今後は複数の専門性を有する人材の育成も重要となる。複数の専攻分野を体系的に履修するダブルメジャーを採り入れるなど学部の枠を越えた教育を実践するためには、学部単位ではなく大学単位で定員を管理する必要がある。

■ 世界と伍する研究大学に求められる経営・ガバナンス(渡邉氏)

政府は、科学技術振興機構に10兆円規模の大学ファンドを設置したうえで、世界のトップ研究大学を目指す大学に資金を拠出し、新しい分野の研究や若手研究者、博士課程学生への支援などに長期・安定投資が行われる仕組みを検討している。今後、対象大学を指定して、24年度から支援を開始する予定である。

世界と伍する研究大学には、(1)優秀な教員の獲得等の人材面(2)優秀な人材の獲得等に必要な資金面(3)外部資金の獲得に必要なガバナンス面――の3つの要素が必要である。日本の大学は、これらをいずれも向上させるべく、改革を進めることが求められる。

人材面での課題は、日本の大学の研究者を取り巻く状況が厳しく、博士課程学生への経済的支援も手薄な点である。資金面では、英米の研究大学の資金規模の成長が著しく、日本の研究大学との差が大幅に拡大している。ガバナンス面では、日本の大学は学長が大学運営のすべてを決定するのが一般的である。一方、米国の大学では、(1)学外のステークホルダーも参画する理事会で戦略などを決定する(2)その戦略を学長が執行する(3)学長によって任命されたプロボストが教学面での学内運営を担う――という経営・ガバナンス体制が一般的である。

これらを踏まえ、総合科学技術・イノベーション会議のもとに設置した「世界と伍する研究大学専門調査会」では、大学ファンドの支援を受ける大学に対し、次代の社会構造への変革につながるビジョンおよび戦略の策定、そのビジョンを達成するために必要となる年3%の事業収入の成長、その実現のためのガバナンス改革を求めることとしている。

【SDGs本部】

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