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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年1月13日 No.3528 「中国式」国際都市香港の実現可能性 -中国の香港政策について聴く/中国委員会企画部会

倉田氏

経団連の中国委員会企画部会(藤末浩昭部会長)は、2022年に日中国交正常化50周年の節目を迎えるにあたり、日中関係の安定と一層の発展に向けて、長期的な日中経済関係のあり方や課題を検討すべく勉強会を開催している。12月3日、立教大学法学部の倉田徹教授から、中国の香港政策について聴いた。概要は次のとおり。

■ 国安法の影響は多方面に

19年に香港で発生した政府に対する抗議活動は、暴力的な衝突も伴いながら長く継続したが、20年のコロナ禍により国内の焦点が防疫へと移ったことで、抗議活動は表面上鎮静化した。20年6月30日、中央政府は「香港国家安全維持法」(国安法)を制定し、香港政府が同日施行した。同法は香港の政治的自由を幅広く制限するものであり、条文のあいまいさから恣意的な運用の可能性が指摘され、民主派の活動を大きく萎縮させた。香港では、インターネット上の閲覧規制も開始され、今後、ビジネスや生活に支障をきたす可能性があることに留意する必要がある。

中央政府は、北京に所在する香港出先機関の中央政府駐香港連絡弁公室主任や、北京における香港担当の国務院香港マカオ弁公室の主任について、従来よりも格上の者に交代し、香港問題に活発に介入するようになった。また、香港の政府高官人事も、中国中央政府の意向を反映したものに変化しつつある。政府ナンバー2の政務長官は、これまでほとんどの場合キャリア官僚が務めてきたが、初めて警察出身者が就任した。中国共産党による直接統治のもとで傀儡化が予想される。また、選挙制度も変更され、民主派の投票権の剝奪や出馬阻止が行われた。新型コロナウイルス対策も中国本土と同様、「ゼロコロナ」を目指した厳格な封鎖措置が取られ、自由な国際往来に懸念が生じている。

■ ビジネス上のリスクも

こうした香港の「中国式」への変化について、ビジネス上のリスクを検討すべきである。中国共産党が「共同富裕」を掲げるなか、香港の民間経済活動にも圧力がかけられている。従来、間接統治の担い手として優遇されていた財界人が、現在は既得権益層として、批判の対象になっている。中国共産党が単に民主派を排除するだけでなく、香港の経済界を本土出身者に置き換えようとしていることもうかがえる。中央政府は香港の国際金融センターとしての機能を維持しようとしているものの、国安法体制下では透明性に疑問が残る。

【国際協力本部】

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