Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年1月20日 No.3529  「男性の育児」推進セミナーを開催

経団連は12月10日、「男性の育児」推進セミナーをオンラインで開催した。経営法曹会議所属の東志穂弁護士(第一芙蓉法律事務所)が改正育児・介護休業法の法的留意点と企業の対応について解説するとともに、「男性の育児」を積極的に推進する企業2社が自社の取り組み事例を紹介した。企業の人事・労務担当者ら536名が参加した。概要は次のとおり。

■ 改正育児・介護休業法の法的留意点と企業の対応~男性の育児休業を中心に(東氏)

東氏

今回の法改正の対応にあたっては、就業規則や労使協定、社内書式をあらためて点検するとともに、人事管理システムの見直しが必要となる。

新設される「出生時育児休業」(産後パパ育休)は原則2週間前までに申し出ることで取得が可能となる。代替人員の確保が難しい職場がある企業等は、職場環境整備等の一定の要件を満たせば申し出期限を1カ月前までとすることができる労使協定を適切に締結することが重要である。

妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対し、個別の周知・意向確認をすることが義務化される。その方法は、(1)面談(2)書面交付(3)ファクス(4)電子メール等――となっている。面談はオンライン上でも可能だが、音声のみの通話は含まれない。また電子メール等についてはSNSの利用も可能であるが、労働者および事業者が送信した情報を出力して書面を作成できるものに限られる。

有期雇用労働者の育児・介護休業の取得要件のうち「引き続き雇用された期間が一年以上」という要件が撤廃され、無期雇用労働者と同様の扱いとなる。つまり、労使協定の締結により除外することができる。

改正内容が多岐かつ複雑であることから、理解不足による言動がハラスメントにつながることも懸念される。早い段階で社内諸制度の改正と、社員への適切な周知を進めてほしい。

■ 一人ひとりのウェルビーイングに向き合うDX企業としての働き方へ「Work Life Shift」の進化(富士通Employee Success本部Employee Relation統括部シニアマネージャー 大宮泰治氏)

大宮氏

2020年7月、生産性とエンゲージメントの向上を目的に、「Work Life Shift」というコンセプトのもと、さまざまな施策を展開している。子育てしやすい職場環境を目指し、これまで5日だった出産育児サポート休暇を20日に拡大することに加え、目的別休暇(最大40日間)と合わせることで、配偶者の産前産後に最大2カ月の有給休暇を付与した。また、遠隔勤務の事由を家庭事情にまで拡大するなど、柔軟な働き方を追求することで従業員のウェルビーイング実現を目指す。諸制度や支援内容を社内サイトにまとめ、社内SNSで取得事例を紹介する等の周知活動にも力を入れている。「男性の育児」については、育児の感動体験を通じて自分自身が考え方の変化を認識し、継続して育児に関わることへとつなげていくことが重要である。

■ GIKENの男性育休取得推進(技研製作所内部監査室執行役員 簑田美紀氏)

簑田氏

16年の女性活躍推進法の施行に連動して、男性育児休業取得推進をテーマとする社内プロジェクトを立ち上げた。具体的には、(1)アンケートでの課題洗い出し(2)給付金シミュレーションツールの構築(3)育休専用ページの開設(4)男性育休取得推進宣言――等を柱とする7項目に取り組んだ。直近では、「イクメンパパ誕生までの流れ」と題して、男性が育児休業を取得する場合のフロー図を可視化するなど、取得のハードルを下げる取り組みに力を入れている。

また、男性の育児に関して社員にメッセージを発信し続け、周知することを大事にしている。具体的には、全グループ社員を対象とする社内説明会を実施するとともに、育児休業を取得した男性社員のインタビューをデジタル社内報に掲載するなど、さまざまな試みを積極的に行っている。

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改正育児・介護休業法の概要については経団連タイムス11月11日付3521号を参照。

【労働法制本部】