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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年2月3日 No.3531 研究インテグリティの確保にかかる対応

経団連は1月12日、オンラインで会合を開催し、内閣府科学技術・イノベーション推進事務局の有賀理参事官から、研究の健全性・公正性(研究インテグリティ)の確保にかかる対応について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 対応の背景

科学技術が国家間の競争における中心的な領域となるなか、近年、外国からの不当な影響による利益相反・責務相反や技術流出の懸念が顕在化している。米国等では対応策が講じられており、わが国としても、新しいリスクに対応し、必要な国際協力および国際交流を進めていくため、国際的に信頼性のある研究環境を構築することが不可欠になっている。

■ 政府としての対応方針

近年の情勢を踏まえ、昨年4月の統合イノベーション戦略推進会議において、研究インテグリティの自律的な確保を目指し、研究者には透明性と説明責任、研究機関等にはリスク管理を求めていく方針を決定した。

同方針は、(1)研究者自身による適切な情報開示(2)大学・研究機関等のマネジメント強化(3)公的資金配分機関による申請時の確認――の3点を柱とする。(1)(2)への対応の一助とすべく、研究者・所属機関向けのチェックリストのひな型を公表する一方、(3)への対応として、昨年12月17日に競争的研究費事業の共通的なガイドラインを改定した。

■ 改定ガイドラインの主なポイント

改定ガイドラインでは、その対象事業を国内の競争的資金から競争的研究費事業に広げるとともに、国外も含む外部からの資金受け入れ状況、兼業等の必要な情報の提出を求めることとした。

資金配分機関(Funding Agency、FA)は情報の提出を求めるものの、利益相反・責務相反については、所属研究機関が管理する。研究者が特定の外国機関から資金提供等を受けている場合であっても、FAは当該研究者に利益相反の疑いがあるかどうか判断しない。

改正点のうち、企業にとって最も重要な内容は、秘密保持契約等が交わされている研究に関する情報の扱いだと考えている。そうした研究については、FAは共同研究等の相手機関名など限られた情報のみ提出を求めることとする。提出された情報は、守秘義務を負う必要最低限の者のみで取り扱うこととし、FAは情報セキュリティポリシーの策定や、情報の取り扱いに関する教育研修の実施などの対応を行う。すでに秘密保持契約を結んでいる共同研究については、当面の間、すなわち次回方針が示されるまでの間、エフォート(※)情報のみの提出を可能とし、相手機関名や受け入れ研究費金額の提出は不要とする。企業および研究機関に対しては、今後締結する秘密保持契約について、競争的資金への応募時に必要な情報の提出が可能となるよう働きかける。また、企業戦略上著しく重要かつ秘匿性が高いといった正当な理由がある場合、契約者双方が合意すれば情報提出を前提としない契約を結ぶことができることをFAおよび研究機関に対して周知する。

なお、同ガイドラインの適用については、2021年度に公募を行う事業に可能な範囲で対応しながら、22年4月以降の公募から順次実施する。

※研究者の年間の仕事時間のうち、当該研究の実施に要する時間の配分率

【産業技術本部】

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