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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年2月17日 No.3533 一人親方等の安全衛生対策と化学物質規制の見直し -労働法規委員会労働安全衛生部会・ワーキング・グループ

経団連は1月20日、労働法規委員会労働安全衛生部会(今村尚近部会長)と関係するワーキング・グループによる合同会合をオンラインで開催した。厚生労働省労働基準局安全衛生部の小宅栄作計画課長から「一人親方等の安全衛生対策」について、また、木口昌子化学物質対策課長から「化学物質規制の見直し」について、それぞれ説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 一人親方等の安全衛生対策(小宅氏)

小宅氏

最高裁判所は2021年5月17日、建設作業に従事してアスベスト(石綿)を吸い込み、健康被害を受けた元作業員やその遺族が国や建材メーカーに損害賠償を求めた集団訴訟に関する統一判断を示した。

同判決では、物や場所の危険性に着目した労働安全衛生法の一部規定は、事業者が自ら雇用する労働者だけでなく、一人親方や中小事業主も保護する趣旨と解するのが相当であるとし、労働大臣(当時)がこれらの規制権限を行使しなかったことは、著しく合理性を欠くものであったと国の責任を認めた。

同判決を踏まえ、同年10月から12月にかけて、労働政策審議会安全衛生分科会において、一人親方等への保護措置のあり方を検討した。その結果、危険有害作業を行う事業者は、自ら雇用する労働者以外の者に当該危険有害作業を請け負わせる場合、請負人(一人親方等)にも労働者と同等の保護措置を実施しなければならないこと(同じ作業場において当該危険有害作業以外を行っている自社の労働者以外についても同様)とする結論を得た。

具体的には、(1)安全確保のために設置した設備(例えば、有害物質の発散を抑制する局所排気装置)について、請負人のみが作業する場合等も稼働・使用できるよう配慮義務を新設(2)作業方法の遵守や保護具の使用等の必要性を請負人にも周知させる義務を課す(3)危険な場所への立ち入り禁止や事故発生時の退避等について、労働者以外の者(請負人や当該場所で他の作業に従事する者)も措置の対象とする――などの省令改正を考えている(23年4月1日施行予定)。

労働政策審議会において同省令改正案が承認されれば、厚労省として、通達やパンフレットを通じて内容を周知し、円滑な施行に努めていきたい。

■ 化学物質規制の見直し(木口氏)

木口氏

化学物質による労働災害(休業4日以上)は、規制対象外の物質を原因とするものが約8割を占めている。背景には、リスクの高い物質として特定化学物質障害予防規則(特化則)等に追加されると、事業者は当該物質の使用を中止し、危険性・有害性を十分に確認・評価せずに規制対象外の物質に変更し、変更後の物質で労働災害が発生するという実態がある。

このため、厚労省は「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会」を設置し、昨年7月に報告書を取りまとめた。同報告書は、特定の化学物質に個別具体的な規制を課す従来の方式から、危険性・有害性が確認されたすべての物質を対象に労働者が吸引する濃度の管理・低減を求め、その達成手段は事業者が自ら選択できる方式(欧州・米国と同様)に段階的に転換すべきとした。

そこで、第1段階の政令・省令改正として、(1)注文者に請負人への文書交付を義務付ける化学物質の製造・取り扱い設備の範囲拡大(2)職長等に対する安全衛生教育を求める業種の追加(3)譲渡・提供に際してラベル表示・SDS(安全データシート)(注)交付が必要となる化学物質(234物質)の追加――を行いたいと考えている(23年4月1日から順次施行)。

労働政策審議会において改正政令・省令案を諮るとともに、引き続き、関係業界や化学物質を扱う現場の意見を聴きながら、自律的な管理を基軸とする規制体系への移行を進めていきたい。

(注)Safety Data Sheet、化学物質の危険性・有害性等の情報を記載した文書

【労働法制本部】

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