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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年2月24日 No.3534 宇宙基本計画工程表改訂について -宇宙開発利用推進委員会企画部会・宇宙利用部会

恒藤氏

経団連は2月4日、宇宙開発利用推進委員会の企画部会(原芳久部会長)と宇宙利用部会(田熊範孝部会長)の合同会合を開催した。内閣府宇宙開発戦略推進事務局の恒藤晃参事官から、宇宙基本計画工程表の改訂と宇宙関係予算について説明を聴いた。概要は次のとおり。

宇宙基本計画はわが国の宇宙政策の基本方針を示すものであり、現在の計画は2020年6月に閣議決定された。政府の宇宙開発戦略本部は毎年、今後10年間のスケジュールを示す宇宙基本計画の工程表を改訂している。昨年12月28日に改訂した工程表のポイントについて、宇宙基本計画で示した宇宙政策の5つの目標に沿って説明する。

1つ目は、宇宙安全保障の確保である。ミサイル防衛のため、多数の小型衛星が連携する衛星コンステレーションについて、特に極超音速滑空弾(注)の探知・追尾の実証にかかる調査研究を行う。自衛隊の宇宙作戦群(仮称)を新編し、23年度から宇宙状況把握システムを実運用するとともに、26年度までに宇宙状況監視衛星を打ち上げて、宇宙状況監視の体制強化を進める。準天頂衛星システム、情報収集衛星、通信衛星等の宇宙システムを着実に整備する。

2つ目は、災害対策・国土強靱化や地球規模課題の解決への貢献である。わが国独自の小型のレーダー衛星コンステレーションを25年度までに構築すべく、関係府省による利用実証を行い、国内事業者による衛星配備を加速する。宇宙太陽光発電の実現に向けて、25年度を目途に地球低軌道から地上へのエネルギー伝送の実証を目指す。温室効果ガス観測ミッション構想を策定・推進し、パリ協定に基づいた気候変動対策による削減効果の確認に活用することを目指す。

3つ目は、宇宙科学・探査による新たな知の創造である。米国が進めている月面探査を行う「アルテミス計画」において、わが国は20年代後半を目途に、日本人宇宙飛行士による月面着陸を実現する。24年度に、火星衛星探査計画(MMX)の探査機を確実に打ち上げる。

4つ目は、宇宙を推進力とする経済成長とイノベーションの実現である。21年度内に軌道利用のルール全般に関する中長期的な方針を策定し、軌道利用に関する国際的な規範の形成に取り組む。

5つ目は、産業・科学技術基盤をはじめとする宇宙活動を支える総合的な基盤の強化である。小型衛星コンステレーションの重要な基盤技術である低軌道衛星間光通信や軌道上自律制御技術等について、早期に実証衛星を打ち上げることを念頭に、わが国が先行して獲得するための取り組みを行う。日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国の枠組みである「QUAD(クアッド)」で、衛星データの交換などについて議論を進める。

政府全体の宇宙関係予算は、令和4年度当初予算案と令和3年度補正予算を合計すると5219億円であり、昨年度より723億円増えた。主に、防衛省、国土交通省、文部科学省、総務省の予算が増えている。今後の政策を実施するにあたり、企業の皆さまと意見交換しながら、研究開発や実証プロジェクトを進めたい。

(注)弾道ミサイルから発射され、大気圏突入後に極超音速(マッハ5以上)で滑空飛翔・機動し、目標へ到達する兵器

【産業技術本部】

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